*

ゴッツン免許とUber

公開日: : 最終更新日:2023/05/20 ライドシェア, 路銀、為替、金融、財政、税制

ゴッツン免許とは俗称である。

体罰が犯罪とされる今日「ゴッツン」は死語かもしれないが、頭をゲンコツでたたくことでである。白トラック行為をしていた事業者が免許を貰う際に、それまで行っていた違法行為(同時に需要があるという証明でもある)に対しゴッツンと頭をたたかれるように処分を受けたことから表現されていた。ある意味で、規制制度が改善されないなかで、物流サービスの提供に齟齬をきたさないように、社会全体がうまく運営していた役人の知恵ともいえる産物であった。物流は経済界が利用者であり、車が不足して経済活動に支障をきたすことは容認されなかったから、既存トラック業界も最終的には文句が言えなかったのである。今では規制緩和が進展し、免許制度は廃止され、数量規制のない制度に変更されている。

カリフォルニアでは、Uberが利用者の支持を受けているのは、規制業界の旅客サービスが十分に提供されていないからであろう。州の規則違反であるかもしれないのであれば、需要があることを示して、ゴッツン免許を受けるという日本でおこなった解決を考えてもいいのではと思う。

翻って日本においても、高齢者の多い地域社会において、バス、タクシーの営業運送サービスが、自家用サービスを上回る水準のものを提供できないところが多くなってきている。その中で規制のみを主張していては、既存業界は社会的な支持を受けられないであろう。ゴッツン免許のような工夫が考えられてもいいのであるが、時代が変わりコンプライアンスも厳しくなっているところから、旅行業法の活用なり、自家用車の有償運送制度や特区制度を活用するなりの工夫が求められるようになってきていると思われる。

 

なお、1983 年 4 月 21 日参議院運輸委員会における梶原清の次のような発言がある

「ごっつん免許という問題を私、常々申し上げておるわけでございますが、トラック運送事業の 免許申請をする人、純粋にこれからトラック運送事業をやるという申請者の大半が白ナンバーの 車で営業類似行為をやっている人ではないかと私は推測をいたします。従来ある程度の実績が確 証できなければ免許にならないという風潮がありましたために、まず実績を稼ぐ、白ナンバーで 実績を稼ぐ、そしてどこそこにどういう荷物が確保できるからといって申請をする、それを認め る。しかし、いままで白ナンバー営業をやっておったのだから、道路運送法違反だから使用禁止 処分をするとごっつんを食らわせて、そして免許を与える。こういうことが従来二十年、三十年 続けられてきたように思うわけでございまして、実は私も自動車行政を長く担当いたしてまいり ましたから、その責任者の一人であるわけでございますが、しかしこれはちょっとやっぱり考え 直さなければいけない、こういうふうに思うわけでございます。しかし、なかなか言うべくして むずかしいことだと思います。トラック免許申請の需給関係について調査をしようというのがな かなかむずかしい、こういうふうに思うわけでございますが、こういう点につきまして運輸省に も一工夫をしていただかなければいけませんが、業界においてもそれなりの工夫をし努力をして いただかなければ正常化ができないのではないだろうか。また、そのゴッツン免許の方式を改め るとすれば、言葉をかえて言いますれば、白ナンバー営業をしておった者には免許を与えないと いうことをするためには、みずから業界の中でも襟を正していただかなければいけない、こうい うふうに思うのですが、これはなかなかむずかしい指摘でございますので、簡単に、御所見がもしありましたらお答えをいただきたいと思います。」に現れている。

関連記事

no image

中国人白タク問題  運転手派遣業とレンタカーの組み合わせによる新規ビジネス

運送機能の分化:金沢学院大学の大学院の講義を契機に、二十年来運送機能の分化について考えてきている。

記事を読む

🌍🎒 🚖 マニラのライドシェア状況報告 チームネクスト IN 新潟 11月1日

新潟でのチームネクストに参加し、マニラの報告を行った。 三条市のデマンド交通の説明を市長と中越交通

記事を読む

『タクシー定期券』の専門誌報道について

2016年8月29日の東京交通新聞に「タクシー定期券」の報道がなされていた.定期「券」に問題があるの

記事を読む

no image

広告だけに収入を求める無償タクシーの報道

https://news.nifty.com/article/economy/business/12

記事を読む

Google日本とBRIDJセミナー

1月28日Google日本の陣内裕樹氏に面談させてもらい、六本木ヒルズのオフィスを見せていただきまし

記事を読む

動画で見る世界人流観光施策風土記 シェアリング・エコノミー論議の方向性 ~貸切と乗合の相対化~

1 シェアリング・エコノミー論の登場 (1) 人流市場のシェアリング・エコノミー論 1970年代

記事を読む

London Car Dispatch App Report ④ Dispatch app business of Addison Lee

In Addison Lee Corp. we got the explanation from M

記事を読む

no image

動画で考える人流観光学帝国ホテル等に見る「住と宿の相対化」

  https://youtu.be/21llSPlP5eQ https://yo

記事を読む

no image

パブリックコメント「道路運送法における登録又は許可を要しない運送の態様について」の一部改正に関する意見公募について

道路運送法の有償性に関する事務連絡の改正が検討されており、パブリックコメントが募集されたので、応募し

記事を読む

MaaS報道の物足りなさ 総合物流業に学べ

相変わらず、MaaSの活字が躍っているには、造語力のなさを示している。私は月極使い放題運送サービス

記事を読む

no image
ロシア旅行の前の、携帯wifi準備

https://tanakanews.com/251206rutrav

no image
ロシア旅行 田中宇

https://tanakanews.com/251205crimea

no image
2025年11月25日 地球落穂ひろいの旅 サンチアゴ再訪

no image
2025.11月24日 地球落穂ひろいの旅 南極旅行の基地・ウシュアイア ヴィーグル水道

アルゼンチンは、2014年1月に国連加盟国58番目の国としてブエノスア

no image
2025年11月23日 地球落穂ひろいの旅 マゼラン海峡

プンタアレナスからウシュアイアまでBIZBUSで移動。8時にPUQを出

→もっと見る

PAGE TOP ↑