『築地と豊洲』澤章 都政新報社
Amazonの紹介では「平成が終わろうとしていたあの頃、東京のみならず日本中を巻き込んだ築地市場の豊洲市場への移転問題。あの騒動は一体、何だったのか。 小池都政最大の謎を、当時、知事の言動をつぶさに見聞した東京都中央卸売市場次長が小池知事の肉声を交えて解き明かす驚愕の内幕。ブレまくる知事、暗躍する知事側近、錯綜する関係者の思惑‥‥」とある。著者が何冊も出版経歴のある元東京都幹部職員なので、エピソードがリアルで、女帝と取り巻きの様子が際立つ。よくぞ豊洲市場開場にこぎつけたな、と感心、仲卸というサカナの目利きがこの騒動で果たした役割も興味深い。時間がない者には、冒頭(10ページ)の「去り際」だけでも読むと面白い。都知事としての評価は初登庁時ではなく、都庁を去るときに地金が見え、定まるとする。石原慎太郎は辞め時を間違えた。4期目の途中に老体となって、自らリクエストしたロッキーのテーマに送られて退庁。猪瀬直樹は札束がバッグに入る入らないの三文喜劇を演じた末に、引きつり気味の笑顔で去った。どけちぶりと小理屈付きで墓穴を掘った舛添要一は、退庁セレモニーを拒否し逃げるように去っていった。誰もが当選すると思っていなかった青島幸男は、退任セレモニーも人柄通り明るいものだった。4期16年を全うした鈴木俊一は誰よりの晴れがましかった。新庁舎を最初に去る栄誉にあずかった。さて小池知事はどう描写されるのであろうか、まだその時は来ないようである。
関連記事
-
「米中関係の行方と日本に及ぼす影響」高原明生 学士會会報No.939 pp26-37
金日成も金正日も金正恩も「朝鮮半島統一後も在韓米軍はいてもよい」と述べたこと 中国支配を恐れてい
-
保護中: 『市場と権力』佐々木実を読んで
日銀が量的緩和策で銀行に大量にカネを流し込んだものの、銀行から企業への融資はそれほど増えなかった。
-
『2050年のメディア』下山進
日本の新聞がこの10年で1000万部の部数を失っていることを知り、2018年4月より、慶應義塾大学
-
『中国人のこころ』小野秀樹
本書を読んで、率直に感じたことは、自動翻訳やAIができる前に、日本型AI、中国型自動翻訳が登場す
-
世界人流観光施策風土記 ネットで見つけたチベット論議
立場によってチベットの評価が大きく違うのは仕方がないので、いろいろ読み漁ってみた。 〇 200
-
フェリックス・マーティン著「21世紀の貨幣論」をよんで
観光を理解する上では「脳」「満足」「価値」「マネー」が不可欠であるが、なかなか理解するには骨が折れる
-
三谷太一郎『日本の近代とは何であったか』なぜ日本に政党政治が成立したのか
1 なぜ日本に政党政治が成立したのか (これまではなぜ政党政治は短命に終わったかを論じてきた)
-
QUORAに見る観光資源 日本から出たことがないのでわからないのですが、日本は本当に治安が良いのですか?松本 貴典 (Takanori Matsumoto),
日本から出たことがないのでわからないのですが、日本は本当に治安が良いのですか?松本 貴典 (Tak
-
伝統も歴史も後から作られる 『戦国と宗教』を読んで
横浜市立大学の観光振興論の講義ノート「観光資源論」を作成するため、大学図書館で岩波新書の「戦国と宗
- PREV
- 『知の逆転』吉成真由美 NHK出版新書
- NEXT
- 『公共貨幣論入門』山口薫、山口陽恵