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 Quoraへの回答 コロナの感染リスクが高まることを承知でGoToキャンペーンを行っていた政府の意図は何ですか?Teramae Shuichi, 人流観光研究所長(観光学博士)

公開日: : 最終更新日:2023/05/30 路銀、為替、金融、財政、税制

コロナの感染リスクが高まることを承知でGoToキャンペーンを行っていた政府の意図は何ですか?Teramae Shuichi, 人流観光研究所長(観光学博士)

経済産業省担当者の無知から来るGOTOキャンペーンの制度設計が、電通への委託費問題で国土交通省にぶん投げられてしまったことに、意図と効果のずれが出たのでしょう。旅行業法は消費者保護にあり、実旅行者への保護にあります。規制運賃、届け出宿泊料金の下では、サービス提供業者が勝手に料金を上げ下げできません。パック旅行は旅行業者が価格を自由に決められますが、決めた料金を人により差別することはできませんから、結局、GOTO補助金は価格を変更することなく、実利用者に提供するという構成をとらざるえません。国税庁の見解でも、GOTO補助は旅行者の雑収入になっています。しかし、補助の狙いは宿泊業者や旅行業の救済にありましたから、制度と実施のずれが出てしまったのです。こんなことは観光庁の担当部局が制度設計すれば、ツアーとは切り離して観光業者への直接補助で行ったでしょう。そうすれば、人出とは無関係に業界補助ができたのです。

従って、GOTOを中止した時のキャンセル問題も、旅行業法は消費者保護にありますから、標準約款で1週間前までは無料のキャンセルを認めていますから、コロナに関係なく、業界にはお金は落ちないようになっていたのですから、事前にこれに措置も考えることができたでしょう。

最後に宿泊業者ですが、日本の宿泊業者、特に旅館は、飲食業者です。従って、飲食業者として、厚生労働省、農林水産省の下で、救済を考えればよかったのです。もっとも日本の旅館業者は、実態が飲食業者であるにもかかわらず、宿泊業者として自己認識していますかから、ずれが大きくなってしまったのです。

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