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植田信太郎 脳の「大進化」(種としての進化)、「小進化」(集団としての進化)

公開日: : 出版・講義資料

https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/story/rigakuru/03/interview/biol.html

植田教授は、2つの側面から「ヒトの進化」の過程の解明に挑んでいる。一つが、「大進化」といわれるヒトの脳の進化(=大型化)だ。ヒトの脳の代わりに、マウスの遺伝子を改変して、哺乳類特有の大脳新皮質の働きやその獲得の経緯を調べている。マウスは哺乳類のモデル動物で、ヒトとマウスの遺伝子は大部分が共通している。遺伝子改変マウスを進化モデルとして調べることで、ヒトの進化の謎に迫ることができるという。

もう一つが、アフリカで誕生したホモ・サピエンスが、世界中に適応・拡散していく「小進化」だ。東アジアとメソアメリカにターゲットを絞り、古代人の骨のDNA解析に取り組んでいる。また、ヒトの社会的・文化的な側面にも着目し、炭化米のDNAを分析して、集団としてのヒトの移動や交流の実態解明に取り組んでいる。

「2つの研究の方法論は重なるところが多く、いずれもゲノムをベースに分子生物学の手法を駆使しています。ですが、2つが目指すところはかなり違います。ヒトの脳の進化の研究を通して見えてくるのは、種としてのヒトの進化です。一方、『小進化』の研究で対象にしているのは集団としてのヒトです。2つの研究成果が重なり合うことはありませんが、それでも私がこの2つの研究に取り組んでいるのは、どちらか一方だけを見ていても、ヒトがヒトたる所以はつかめないと思うからです。個体と集団、両方からヒトの進化を見るというのが私の研究スタンスなんです」

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