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MaaS報道の物足りなさ 総合物流業に学べ

公開日: : 最終更新日:2019/04/08 用語「人流」「観光」「ツーリズム」「ツーリスト」

相変わらず、MaaSの活字が躍っているには、造語力のなさを示している。私は月極使い放題運送サービスを含め、漢字では人流を造語してみた。むしろ英語でどう表現するか考え、Human Logostics といってきたのだが、総合人流イコールMaaSでも問題はない(宿泊等が含まれない点を除き)のである。

日本語で作られた翻訳語が中国でも普及したのは、漢字の持つ造語力を日本人が活用したからだといわれる。投石などは日本語の語順でなく、中国語の語順である。漢文が公用語であった江戸末期の日本の知識人は中国語の語順等をよく理解していたから、本家の中国にも日本で作られた言葉が普及したといわれている。

MaaSもアルファベット圏の人が使う場合は、その背景を理解して使用しているであろうが、それでも漢字の持つ造語力には劣後する。ましてや日本人や中国人にはMaaSでは活字をみてもわからない。だから、概念もわからないから、好都合な者もいるのであろう。

 物流の時は、MaaS的なものとして総合物流業が造語されており、中曽根総理時代の運輸省組織改正のときはキーワードであった。モード別に分かれていた運送業規制を保管や在庫も含めて、一つの局でまとめて所管しよういう発想で貨物流通局を作ったのである。組織作成の担当課長はタクシー関係者ならだれでもご存知の亀甲邦敏さんであった。

 物は勝手には移動しないから、誰かが手配する。そのため、手配という物理的、法律的行為を行う者がいるので、総合物流という概念が生まれた。運送だけではなく在庫や保管も含まれている。それでも研究者の中にはロジスティックという用語をカタカナで使いたがる者が多くいた。カタカナの方が概念が曖昧で、都合が良かったのであろう。

 総合物流業は、費用負担の見方と契約の見方があり、法的には輸送をモードを横断的に取り扱う貨物運送取扱事業法が新たに制定された。運送手段を問わず、A地点からB地点に運送する責務を負うわけで、逆に「実運送」という法律用語まで生まれた。ヤマト運輸を想定していたのだが、AMAZONが生まれてしまった。宅配便に相当する人流商品もその時の経験から発想したのだが、Uberが誕生し、日本では足を引っ張っている。わからないものだ。

 人は自らの意思で移動するから、モノとは違う。そこがMaaSで大騒ぎする人にはわかっていない。最初から最終目的に向かって自ら移動するのである。さらに物流でいえば在庫や保管に相当する、宿泊や休憩まで含めた、総合物流に相当する概念にまで広げなければならないことが分かっていない。総合人流情報が便利になればよく、運賃や宿泊費も満足のいくものであればいいのである。人流では、貨物運送取扱事業法に相当する法律は既に存在する。旅行業法である。今は亡き尊敬する西村康夫さんが内閣法制局参事官時代に作られた。

 旅行業法には利用運送規定や利用宿泊業が明文で規定されているが、使われていないだけである。MaaSで大騒ぎしているマスコミや研究者は、この旅行業法のことを全く知らない。有名旅館の空予約で大騒ぎをした宿泊関係者も旅行業法を知らなかったようだ。情報提供だけなら技術進歩の話で、新味はない。20年前に私もモバイル交通革命を出版した。その後、ユビキタスという名前も生まれた。MaaSにはほとんど新しい概念はない。

 JTBが月極乗り放題のJERONタクシーを始める際に相談を受け、この利用運送規定を活用することも話したが、請負責任まで負うことはまだ時期尚早であることも理解していた。それ以前に利用運送を想定する標準約款すら存在していないからである。

 月極乗り放題はパッケージツアー(バスや鉄道を組み合わせるだけでなく、日本ではタクシーや鉄道、ホテルだけの単品パックも認められている)用の既存の企画旅行約款をベースに考えることとなったが、そのままでは今はやりのサブスクリプションにはならないので、その部分の規定を追加した。何度も使い放題が可能なようにしたのである。旅程保証責任は旅程の考え方次第であるから、今の全国一律の標準約款でも問題は全くない。乗り放題の場合、在宅中の特別損害賠償責任規定をどうするかであった。JTBクラスになると、在宅中の補償を行うこともできる。それに対応する運送保険でもかけておけばいいだけのことであるが、やはり新しい仕組みなので、将来を考え、在宅中の責任を外すことにした。そのためには、標準約款の内容を修正しなければならなかった。

 結果的には、修正できたのであるが、観光庁の担当者には意味があまりわからないのか、わきから見ていた私にはずいぶん時間を使わされた印象を持たされた。創意工夫が身上の観光商品が、標準約款しか認めないというのでは、観光庁も口先だけの官庁であり、総合物流業に相当するビジネスを育てようを意気込みが感じられない。標準約款制度が邪魔をしているから、発案者の西村康夫さんが存命なら、押しかけていって直させたのではないかと思うくらいである。

 通訳案内士が、自分の所有する車で観光地を通訳案内する場合、車の運送代金をもらわなければ合法であり、トータルに通訳案内士の料金でかかった費用を回収すればいいと解釈されていた。そのことが通訳案内士協会のHPにも記載されていた(ネットの世界ではログが残っているから公知の事実である)。ホテルが自家用バスで送迎するのと同じである。それを、通訳案内士法の業務独占規定の廃止の施行前に、昔から違法であるという解釈を打ち出してきた(通訳案内士法を国会に出す前なら、通訳案内士協会も観光庁や国土交通省と取引ができ、N幹事長が名采配をしてくれたのかもしれないが)。経緯は私のこのブログのどこかに出てくるから参照してもらいたい。観光庁は国土交通省の下部機関だから、自動車局の意向に従わざるを得なかったのであろう。これが病院や学校のスクールバス、通院バスだと、大論争になる。観光庁が経済産業省にあったとするなら、内閣法制局に行くこととなったであろう。自動車局の負けだと思うが、そんなことを言いたいのではない。日本の旅行業界が、今は観光だともてはやされているときに、何故観光庁を後押ししないのかということである。

 現在でも、仮に通訳案内士が自家用車で無償運送をして、通訳案内料金をいただいていて、白タク行為だとして告発をされても、検察庁は受け付けないのではと思う、罪刑法定主義の日本だからだ。いくらゴーンさんの逮捕で、憲法上の問題があると非難されている検察でも、裁判で勝てる見込みがない事件を取り上げないと思いう。難しいのは、名称独占ではなくなった通訳案内師(士ではない)などが行うと、事実上観光だといって白タクができてしまうことであるが、その問題は立法的解決するしかない。航空運送でも航空運送事業と、航空機使用事業のデマケが難しいのと同じがあるが、立法的解決以外に道はない。

 福岡の月極使い放題タクシーの(今のはやり言葉でいえばサブスクリプション)約款を他の地区で活用するときに、観光庁は条件を付けるようになったと聞く。多分自動車局に配慮しているのであろう。配慮ではなく「忖度」なのかもしれない。なお、Subscriptionも語源が感覚的に頭にこびりついている英語圏の人は定期購読といった概念を超えて理解ができるから、乗り放題がイメージできるのであろうが、漢字文化圏の我々には、漢字で表現されないと本質的にはわからないはずであり、ましてやMaaSなどその意味がわかるはずがないとおもっている。

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