Human Logistics の語感(東洋大学国際観光学科准教授徳江順一郎氏のと論議)
公開日:
:
最終更新日:2016/11/25
人流 観光 ツーリズム ツーリスト Human Logistics, 人流
東洋大学国際観光学科准教授徳江順一郎氏から「人流がHuman Logisticsですか。 一応、マーケティングを専門としていた自身の感覚としては、 Logisticsというと操作性…つまり、何らかの意図をもって移動させる、 といったようなイメージがあります。 人流は、必ずしも特定の意図にしたがって移動させるのではなく、 色々と工夫をして移動してもらう…という点にポイントがありそうですので、 おっしゃる通り、若干の違和感がありますね。」というご意見をいただきました。大変有り難くまた重要な指摘事項です。
人流・観光研究所開設にあたって時間の制約もあり、論議不十分な点があることは自覚の上でしたが、さすがに一番痛いところを指摘いただきました。
徳江先生には次のようなメールをださせていただきました。
「LOGISTICSの語感ですが、計算された行動のニュアンスがあるので、 ご指摘の点は気になっていました。 人生、時間に限りがあるので、 効率的に、移動、宿泊、娯楽等をしましょうという意味で、 計算されたということになるのは、どうも余裕がない気もいたします。 しかし、何もしない時間も含めて、最大満足が達せられるよう、 マネジメントしますということで、とりあえずLOGISTICSを使用することにした次第で す。 問題は2つあり、一つは主語です。 物流は荷主の要望に応じて最も効率的にサービスを提供する者ということで明快です。 人流の場合、荷主に相当する旅主の要望があいまいです。 以前に『旅主社会』という言葉を使用したことがあるのですが、荷主ほど明快に論じれませんでした。 また、物流は発荷主、着荷主に対する物流サービス提供業者である「3PL」がより強く出てこれる余地があるのですが、人流ではアウトソースすることに意味があるのか問題となります。 2つ目は物流との関係です。 国際会議でよく、サブ班、ロジ班ということが言われます。 この場合のロジ班は、飛行機、ホテル等の手配をします。 兵站(MILITARY LOGISTICS)にも物資輸送だけではなく兵士の輸送が含まれます。 従って、物流をLOGISTICSとするのは意味が広がりすぎている気がします。 しかし、物流イコールロジスティックスが定着しすぎているので、論議が出るでしょう」
旅主社会:『新世紀交通課題』2000年㈱ぎょうせい において、荷主に対応して「旅主」を造語し、旅主社会を提唱したが普及しなかった。しかし、現在の人流を発想するきっかけにはなった
3PL:サード・パーティ・ロジスティックスのこと。発荷主と着荷主の間に立ちアウトソースされた物流業務を引き受ける。おおむね金銭評価が可能であり判断がしやすい。人流では発旅主と着旅主が常に同一人物であり、アウトソースすることの論議が確立していない点、つまり金銭評価だけでは判断できない点で物流と異なる。
関連記事
-
人口減少の掛け声に対する違和感と 西田正規著『人類史のなかの定住革命』めも
多くの田舎が人口減少を唱える。本気で心配しているかは別として、政治問題にしている。しかし、人口減少と
-
東京オリンピックを迎える学生・社会人のための観光・人流概論
新しい教科書を出版しました。私はこれまで観光政策論等を中心に出版してきま
-
英和対訳袖珍辞書と観光
先週は都立中央図書館が図書整理のため休館日が続き、ようやく土曜日(6月13日)に閲覧に行くことができ
-
保護中: 『植物は知性を持っている』ステファノ・マンクーゾ 動物と植物は5億年前に進化の枝を分かち、動物は他の動植物を探して食べることで栄養を摂取する「移動」、植物は与えられた環境から栄養を引き出す「定住」、を選択した。このことが体構造の違いまでもたらしたらしい。「目で見る能力」ではなく、「光を知覚する能力」と考えれば、植物は視覚を持つ
植物は「動く」 著者は、イタリア人の植物生理学者ステファノ・マンクーゾである。フィレンツェ大学国際
-
二月五日チームネクスト総会講演「総合生活移動産業の今後の展望」(45分)趣旨 人流・観光研究所長 寺前秀一
二月五日チームネクスト総会講演「総合生活移動産業の今後の展望」(45分)趣旨 人流・観光研究所長
-
孫建軍著『近代日本語の起源』に見る用語「国際」の誕生
用語「観光」を論じるにあたって、国際との関係をこれまで考察してきたが、考えてみると、日本人社会のなか
-
「厚生」省の誕生と国内「観光」政策
字句「厚生」の誕生を調査することにより、国際に限定されて使用されていた字句「観光」の使用例が、国際観
-
Analysis and Future Considerations on Increasing Chinese Travelers and International Travel & Human Logistics Market ⑧
Ⅶ Alaska and Hawaii ~ High latitude tourist site
-
BUSINESS Insider の記事
松尾氏のデープラーニングの話を聞いた後だったので、Business Insiderの下記記事が本
-
『日本経済の歴史』第2巻第1章労働と人口 移動の自由と技能の形成 を読んで メモ
面白いと思ったところを箇条書きする p.33 「幕府が鎖国政策によって欧米列強の干渉を回避した
- PREV
- 人流・観光論議
- NEXT
- 用語としての「人流」の発生