学生への出題2(外国人観光客と外国人移民の違いをのべ、その違いについての評価を論述せよ)の解答への講評
公開日:
:
人流 観光 ツーリズム ツーリスト
まず違いの前に共通事項を上げる学生がいた。優秀な学生は「国際的な人流である」「訪問国に経済的な利益を与えるものであること」としており、この学生には万点を与えた。違いを論じる伏線になるのである。外国人であること、パスポートをもっていること等でも構わないが、厳密には観光客の場合は365日ルールがあり、国籍分類ではない。365日を超えるとMigrantととなり、touristではなくなるが、Migrantを移民と訳すとニュアンスが変わってくる。出稼ぎ労働者と移民も異なるが、あまり区別しないでおく。
違いの記述として、訪問目的(娯楽か就労か)滞在日数(24時間、365日)は基礎知識として重要である。統計の元となる基礎であるから、外せないであろう。国際観光統計では日帰りは観光客扱いしないのであるが、日本のような島国と陸続きの国では機能も違うであろう。
経済効果は、GDPを増加させる移民の方が大きいとする論述の方が説得力がある。農業や建設業の方が、観光業よりも日本経済には重要ということであろう。観光の場合は国際収支に力点が置かれることが通例だが、変動相場制の現在あまり期待されていない。
文化摩擦は、論者の価値観で違ってくるが、考える期間が長い場合には、移民の方が摩擦を少なくするとする論述に説得力があった。外国人の犯罪率が高いという統計上の数字も出ていないようだ。相乗効果としては、VFRを論述したものがみられたが、授業に出席していたことがわかる。
概して400字を超えるものが多く、400字ではまとめきれなかったようだ。字数を守ったがゆえに評価を下げるわけにもいかず、超過したからと言って評価を下げることもできず、苦しい採点であった。
関連記事
-
-
用語「観光」誕生物語 朝日新聞記事データベース「聞蔵」に見る昭和のクールジャパン報道分析
2014年10月10日にジャパンナウ観光情報教会観光立国セミナーで行った講演の議事録です。HPには使
-
-
概念「「楽しみ」のための旅」と字句「観光」の遭遇 Encounter of the concept “Travel for pleasure” and the Japanese word “KANKO(観光)”(日本観光研究学会 2016年度秋期大会論文掲載予定原稿)
「「楽しみ」のための旅」概念を表現する字句が、いつごろから発生し、どのように変化していったかを、「「
-
-
東京オリンピックを迎える学生・社会人のための観光・人流概論
新しい教科書を出版しました。私はこれまで観光政策論等を中心に出版してきま
-
-
はやり言葉になるか『Maas』日経BP社を読んで
はやり言葉になるかどうかだが、UberやRide-Shareほどのインパクトはないのだろう。とにか
-
-
語源論の終焉~概念「観光」と字句「観光」~
27年度帝京平成大学紀要に原稿を入稿した。昨年度に続き概念「観光」に関連するテーマであるが、今回は国
-
-
動画で考える人流観光学講義(開志 )2024 1 22 最終 外国人労働者とAI
観光ビジネスにおいて、外国人労働者を雇用することについて、どう考えるか、800字から1200字の
-
-
ピアーズ・ブレンドン『トマス・クック物語』石井昭夫訳
p.117 観光tourismとは、よく知っているものの発見 旅行travelとはよく知られていな
-
-
シニアバックパッカーの旅 2019年11月19日 小樽~新潟
https://photos.google.com/album/AF1QipNYbi4hkAlXy7