プロテスタンティズムと現代政治 学士會会報NO.927 2017年Ⅵ 深井智朗 pp24-27
公開日:
:
観光資源
マルティン・ルターによる神聖ローマ帝国の宗教の改革は、彼の意図に反して、すぐに政治化し、彼の死後まもなく、ローマ帝国から分離されたルター派(当時そう呼ばれていたわけではないが)が誕生した。
ルター派は自分たちの宗派は法的根拠を持つ正当な教会であると応報した。
領主たちに、カソリックよりも政治的に役に立つ、使い勝手の良い宗派であることをアピールしなければならなかった。なぜなら宗教の決定権は領主にあるのだから。ルター派はカソリックよりも権力者や政府の政策によりそう宗派になった。
宗教改革から引き出される宗教制度や社会の改革というイメージとは真逆に、ドイツのルター派は体制側に寄り添う保守的な勢力である。
それに対してもうひとつの改革勢力は、従来の改革の不徹底さを嘆き、よりラディカルな改革を求めた人々の動きである。
バプテスト派は、この改革の改革の流れの中から出てきた。
自由に教会を作る権利などという考えは、社会の統一だけでなく、協会の一致も破壊する恐ろしい考え方だとされていた。
近代世界の成立との関連で論じられ、また近代の様々な自由思想、人権、抵抗権、良心の自由、デモクラシーの形成に寄与し、あるいはその担い手となったといわれているのは、カトリックやルター派、そしてカルビニズムにいじめ抜かれ、排除され、迫害を受けてきたこの「改革の改革」を主張したプロテスタンティズムのことである。これがキング牧師やオバマを生んだ政治的伝統であろう。プロテスタントは一枚岩ではないのだ。
関連記事
-
-
原田信男著『義経伝説と為朝伝説』
伝説においては、歴史学の大原則ともいうべきテキストクリティック(史料批判)は必要とされない。資料の一
-
-
『明治維新を考える』三谷博 有志舎 2006年
序章 明治維新の謎 維新という言葉 幕末から頻用されてきた「一新」という言葉を中国の古典に置き換え
-
-
マザーテレサ 歴史は後から作られる例
マザーテレサについて、ウィキペディアは、正反対の記事を二つ載せている。 スコピオを旅行したと
-
-
『帝国陸軍師団変遷史』藤井非三四著 メモ
薩長土肥による討幕が明治維新ということになっているが、なんと首都の東京鎮台本営に入った六個大隊のう
-
-
観光資源評価の論理に使える面白い回答 「なぜ中国料理は油濃いのか」に対して、「日本人は油濃いのが好きなのですね」という答え
中華料理や台湾料理には、油を大量に使用した料理が非常に多いですが、そうなった理由はあるのでしょうか
-
-
『動物の解放』ピーターシンガー著、戸田清訳
工場式畜産 と殺工場 https://www.nicovideo.jp/watch
-
-
『枕草子つづれ織り 清少納言奮闘す』土方洋一 紙が貴重な時代は、日記ではなく公文書
団塊の世代が義務教育時代に学修したことの一部が、その後の研究により覆されている。シジュウカラが言
-
-
動画で考える人流観光学 観光資源論 フィリピンセブ島刑務所の囚人ダンス
フィリピンセブ島観光・旅行【決定版】絶対にするべき39スポット&アクティビティ http://ce
-
-
脳科学と人工知能 シンポジウムと公研
本日2018年10月13日日本学術会議講堂で開催された標記シンポジウムを傍聴した。傍聴後帰宅したら
-
-
マルティニーク生まれのクレオール。 ついでに字句「伝統」が使われる始めたのは昭和初期からということ
北澤憲昭の『<列島>の絵画』を読み、日本画がクレオールのようだというたとえ話は、私の意見に近く、理解
