マニラのライドシェア状況報告 チームネクスト IN 新潟 11月1日
公開日:
:
最終更新日:2017/11/02
マニラの観光交通事情
新潟でのチームネクストに参加し、マニラの報告を行った。
三条市のデマンド交通の説明を市長と中越交通から受けた。
デマンドなのだからタクシーだという発想に立っていることは正しいが、オンデマンドではないバスだから、デマンドが注目されたのであり、タクシーはもともとデマンドであるが、マイカーが普及してそのことも忘れられてしまっているのであろう。
問題は、市場が成り立たないところにサービスを供給するから、その赤字をだれが負担するかであり、バス事業者では黒字路線を持たない限り無理である。勿論黒字路線などないから、引き受けられないのである。タクシー事業者も、株主、運転手の手前もあり、ラーメンタクシーをして稼いだカネをつぎ込むわけにはいかないであろうが、鉄道では濡れ煎餅で稼いだ金をつぎ込んでいる銚子電鉄もある。
従って、税金をいくらつぎ込むかという政治判断になり、自治体の判断である。しかし、権限のない自治体には判断が難しい。権限のある運輸局は金がない。であれば、運輸局が金を負担しないのであれば、自治体に権限を渡せばいいのであるが、現状ではうまくいっていないのである。きわめて単純なことであるが、自治体に権限が委譲され、自家用車活用のUberを使われると事業者も困るから、これも進まないのである。
さて、マニラの報告でああるが、以下に簡単にまとめ、会員に報告した。
今回の大きな関心事
世界で初めてUber型の交通機関が法令で制定されたという情報の確認 それ以前の状態でのUber型交通機関の合法性(非合法性)の確認 運転手付きレンタカーの合法性の確認
訪問先
1 経済成長と交通渋滞、それがタクシービジネスに与えた影響
マニラの経済発展はASEAN諸国のなかでも目覚ましい。
それと共に激しさを増す交通渋滞は、市民のみならず、我々旅行者泣かせでもある。
渋滞の原因は、道路整備と交通需要のミスマッチである。
高速道路、地下鉄等の整備が遅れている。
ビレッジという高級住宅地が交通渋滞に輪をかけている。
フィリピン市場の6割を10大財閥が占めている
ホテルの客室から見て森に見える部分は、富裕層だけが住む私的な居住地
混雑しても代替手段がなく、タクシーの対応も悪く評判をおとしている。
タクシー台数が3万3千台と需要に対して少ない。
Uberの自家用車オペレーターだけでも3万6千台を超える(マニラブリテンの報道)のだから供給が少ない。
Uber等が歓迎される理由でもある(Uberは日本と同様タクシードライバーも組織化しているが)。
この点は東京とは異なることも認識しておかなければならない。
その一方で、Micabは、渋滞中のタクシー車内空間を広告宣伝媒体を売り込む格好の機会ととらえてビジネス展開を実行しようとしている。
その発展形のアイデアがRYOAKIタクシーの無料化構想である。500台を2000台に増加できれば可能だと考えているようだ。他社と組むこともいとわないようである。
2 貸切と乗合
マニラ市民は交通渋滞にもなんとか乗合のライドシェアで対抗している。ジップニーは、ジープを改造した小型バスで、市内中を毛細血管のように路線が張り巡らされている。
大阪でも交通渋滞が激しい時期、導入が研究者から提案されたことがある。
空港でのイェローキャブ、プレートは白
空港でのクーポンタクシー(定額)と思われる表示

これを補完するものとしてUVE(Utility Vehcle express)があり、地球の歩き方ではメガタクシー、あるいはFXタクシーと呼ばれている。乗車施設を持ち。メーターによる乗合であるが、むしろ小型バスに近い。
貸切型の交通機関の代表はタクシーであり、地球の歩き方には、運賃の 安いレギュラータクシーとイェロータクシーに区分されている。
しかし、街中を走りるタクシーのナンバープレートの色は、白色と黄色が混在し、はじめ意味がよくわからなかった。
マニラのタクシーは評判がよくない理由は、勤務形態も影響している。
マニラ空港では一時イェローキャブ(白ナンバー)が乗り入れ禁止になったと聴かされた。
ホテルから空港まで利用したレギュラータクシー、白ナンバー
マニラ空港のイェローキャブの写真、ナンバープレートが白色で混乱する
ドラーバーは運賃収入の中から一定額を会社に支払えばよい形態で、雇用主の経営管理ができていない。
定年はなく65才を過ぎると社会保険から外れるだけである。
パヤタス地区でヒアリングしたドライバーはタクシー経営者と車のオーナーの区別ができていなかった。車の所有がいるとだけ思っており、何度か質問しているうちに、それならオーナーがタクシー経営者なのだと認識したくらいである。
彼は一日3000~3500ペソの売り上げから1日当たり1300ペソ支払っている。ガソリン代等はドライバー持ちの、隔日勤務である。
そのほか、オートバイにサイドカーを付けたトライシクル、自転車にサイドカーを付けたペディキャブがある。
3 Uberの登場
市民の不満をバックに、Uber、GRAB等が登場した。この配車サービスアプリは、乗客とドライバーとを直接繋ぐプラットフォームの役割を果たす。
タクシードライバーや一般民間人も、この配車サービスに登録することができる。
衛星追跡機能を備えたTNCアプリもあり、乗客がこれを利用して友人や家族にルートや正確な位置を把握させることもできる。
一般的に通常のタクシー料金の2倍から3倍だが、より安全で早く、顧客に積極的に利用されている。
タクシーのドライバーは稼ぎを目指して客対応が劣化し、安いガソリンを使いメンテも怠りがちになる。
これに対してuberは自家用車を利用する場合は、メンテもしっかりし、評判がよくなるのである。
この手法に対して、フィリピン公共サービス法(共和国法第146号)の規定に違反する疑いが提起された。この法律は米国統治下の1936年に制定されているから、英米法の基本概念である common carrier概念が登場している。
旅客用の自動車は 定路線・非定路線ともコモンキャリアと定義づけられているから、ロンドン等と同じ状況が発生するのは想像できる。
同法は基本法であり、具体的には、陸上交通許認可規制委員会(LTFRB)の定める規定等によることとなる。
LTFRBは2014年、営業権をもたずに配車サービスに登録している個人車両について調査を開始した。
その報告書によると、調査の結果、Uberのアプリを利用して顧客と連絡を取っていた個人車両のドライバーが発見された。
そのドライバーの免許証は没収され、また車両は押収され、罰金の支払が命ぜられたと報道されている。
当然ながら、LTFRBの「Uber対応」には一般利用者から多くの批判が寄せられた。
均衡を保つため、2015年5月8日フィリピン交通省は省令2018-011を発しTNVSを範疇化した。
アプリベースの公共輸送サービスを世界で初めて国家の法的規制の枠組みに入れたものであると言われている。
しかしながら、範疇化の内容、法形式の考え方次第では、英国のPHV(Private Hired Vehicle)等の方が先なのかもしれない。
4 Uber騒動
我々が訪問する前にUberとLTFRBの間でトラブルが再び発生していた。
LTFRBがTNVSの新規運転手募集を控えるようにという指令を出したところ、Uberは命令に違反して新規募集を継続していた。
LTFRBはUberに対して営業停止30日の命令をくだした。
Uberドライバーも生活ができなくなり困ると騒ぎが起き、利用者もアプリが使えなくなると困りだしたのでUber側は事業を再開し訴訟に持ち込む姿勢を示した。
上院公共サービス委員会委員長も仲裁に乗り出していた。
LTFRBは1.9億ペソ(一日当たりUberの稼ぎの1千万ペソの19日分)を罰金として支払うこと、Uberドライバー36000台分のオペレーターにも2000万ペソの補償をすることとを条件に、事業再開を認めた。
英米法流の独立行政委員会行政なのであろう。日本では考えられない決着の仕方である。
5 TNVSとPremium Taxiの範疇化
新しい制度のもと、LTFRBがTNVSのカテゴリー化と共に、プレミアムタクシーも、空港バスとBRTとともにカテゴリー化した。
車齢が7年未満、クレジット決済、GP位置情報、配車アプリ等の条件はTNVSと同じで、両者の違いは流し営業ができるかできないかである。
現地を訪れてみて、PREMIUM TAXiが話題になっていないことに驚いた。
ニューヨーク市交通局等がARROW、CURB等を推奨している立場に通じるものがあるが、既存タクシーのハイテク化は行政当局の思うようには進まないようである。
6 運転手付きレンタカーと運転免許証
日本の関係者には信じられないかもしれないが、フィリピンのレンタカーはドライバー付きが普通である。海運や航空では当たり前のウェットリースと呼ばれるものである。
流し営業と車庫待ち営業が違うものとして認識されている英米法の国だからであろう。
このドライバー付きレンタカーの相場は、1日当たり100ドルである。
日本語のサイトでも、日本語の通じる運転手付きレンタカーの募集がみられる。フィリピンに旅行する日本人には事前に予約ができ、便利である。
タクシー業界からのレンタカーのドライバー付き営業に抵抗がない。
RYOAKIタクシーも両者を経営している。
ドライバーつきレンタカーとタクシーの違いは端的に行ってメーターの有無であり、営業形態がハイヤーなのである。
英米法の国なのであろう。タクシーとは流し営業をするもので、それ以外はタクシーではないということが常識なのであろうか、私が質問すると当たり前だという顔をされる。
会社は、ドライバーもタクシードライバー経験をあてる。レンタカーはタクシーの走行距離に比べ30分の1、中古下取り価格も良く、経営者にはもってこいである。
ナンバープレートの色は、ジップニー、バス、タクシーは黄色(営業用トラックも勿論黄色であった)、レンタカー、自家用車のuberは白色である。基本はコモンキャリアが黄色と理解するが、
ホテルから空港まで乗車した「タクシー」のプレートは白色でありコモンキャリアではないとすると、メーター料金であったことが理解できなかった。
黄色ナンバーと白色ナンバー
運転免許については、 学生、プロ、ノンプロ、車掌の4種類存在する。ノンプロからプロに変更するには50ペソ必要である。レンタカー、uberのドライバーはプロ免許証が必要である。
7 Micabの登場
フィリピンでは、micabというものが、若い経営者の手で、2017年10月からスタートする。運転手と乗客をマッチングするシステムである。
Micabは50ペソのブッキング代を乗客からもらうが、40ペソはドライバーに、10ペソはタクシー会社に支払うのでシステム会社はゼロ。その通信費はタクシー会社持ちだが、ドライバーが車内で使うタブレットは通信費込みで通信会社から支給される。
micabはタブレットに映る広告宣伝費が唯一の収入源となる。セブ島での成功を元にマニラに進出するのである。uberと異なり、営業タクシーのみを対象とする。従って、TNVSではないとLTFRBの了解をとりつけていると説明を受けた。自家用車ではなくタクシードライバーに特化したuberとの競争を考えた結果、ブッキングフィーをタクシー会社と運転手に支払うのである。
従って、タクシードライバーとタクシー車両保有のタクシー会社と利用者の三者をマッチングさせるシステム会社であり、事実上運送機能が分化しているマニラならではのシステムである。更に、定路線を走るmicoachも来年にはスタートさせる予定である。
Micabの経営者の写真
micabは乗客がドライバーを評価すると同時に、ドライバーも乗客を評価する。
ドライバーは三回まで拒否できるが、それ以上だとMicabのシステムから排除される。システム内の問題なので、乗車拒否には当たらないとの見解は、TNVSにも該当しないのだから当たり前でもある。
乗客からのブッキング代はタクシー運賃に含まれないとの解釈も規制委員会の了解済みであるという返事であった。
運送機関ではないのだから当然でもある。日本で考えれば手配旅行代金で、らくらくタクシーやタクあしくんと一部重なるものである。タクシーに限定したマッチングビジネスもらくらくタクシー等一緒である。
違いは広告を中心とするビジネスモデルであることである。渋滞が激しく広告媒体としては有効だからである。RyoAkiタクシーの経営者も、2000台になったらタクシー料金はタダにしても広告で経営できる可能性があると夢を唱えていた。
https://www.facebook.com/MiCab.co/
運送機能の分化と総合生活移動産業
運送機能の分化現象がタクシーの場合フィリピンで発生していることに驚いた。
実は日本も可能性はある。レンタカー会社がドライバーを一緒に斡旋することを禁じることは行政的に許容の範囲内である。
しかし、タクシー以外の運送分野では、施設提供サービス、職員派遣サービス、集客サービスに大きく分化している。
巨大な国際ネットワークを形成するには、自己資本で全部を完結できるものでもなくアライアンスを組むのである。
陸上移動の世界も人流が巨大化すると当然受け皿としてそうなるであろう。
GoogleがGoogleライダーを考え、次にGoogleタクシーを考えたのも、運賃ではなく広告収入や物販店からのキックバックを基にする人流ビジネスモデルを目指したからである。
レンタカー需要者と、そのドライバー派遣需要者を無料でマッチィング(利用者が自分で選ぶのをお手伝いするだけであるが)させることは道路運送に違反しない。
レンタカー会社やドラーバー派遣会社の広告を相互にとると違反になるという解釈は成立するが、Googleのように資本関係のない者がアクセスしてきた者に無償で行うことは道路運送法違反にならない。
HISの作戦ミスは、自社のレンタカーだけのシステムに限定したからである。複数のレンタカー会社が提携して、複数の運転手派遣会社と組み合わせれば、直ちに有償運送行為だという見解はでなかったであろう。自前のキャリアー等を抱えるJTBやHISよりも、まったく無縁なシステムの方がやりやすい解釈を日本の行政当局は取っている。
Googleでは、検索蘭に空港名を二つ入れると、たちどころにその二地点間のフライトが打ち出されてくる。料金や時間、乗り換え回数まで出てきて、最終的に選んだものに対して、今度は予約サイトへ案内してくれる。しかし、googleの画面には時折、空港近くのホテルの広告が飛び込んでくるようにはなる。
この場合の有償性の解釈であるが、勿論旅行者需要を当て込むホテル、物販、保険会社の広告までは含まれないと考えるのが常識であろう。検索システムで両者をマッチングさせるから、Googleが旅行業法等の違反とするのは、全世界的な笑いものになる可能性があるからである。
しかし、乗客の個人情報を分析して、その乗客あった広告を車内で打つのであるから、広告価値は高い。
ぼやぼやしていれば、巨大な国際人流システムが人流情報を基にその手法で入り込んでくるだけである。
終わりに
フィリピンの後、昆明(五百万)、麗江(百万)、成都(千四百万)を経由して帰国した。
中国には配車アプリも存在するが、今回はバス、タクシーを利用して移動してみた。
カーナビは勿論ついておらず、バス内にはwifiもなかった。
四川省、雲南省では、流しのタクシーは勿論、空港でのタクシーも英語が完全に通じず、日本のタクシーで中国語が完全に通じないのと同じである。
大学時代に少しかじった中国語と漢字を駆使して意思疎通を図った。
だから、言葉が通じなくても目的地まで利用できるスマホ配車アプリが利用されるのも当然であろう。
中国語ので切るバス・タクシー運転手が皆無である上、スマホ配車が普及していない日本において、訪日中国人個人旅行者が中国語のできる自家用車(白タク)を選好するのは、ある意味自衛策でもある。フィリピンで日本語のできる運転手付きレンタカーが普及するのと同じ構造がある。
なお、中国はGoogleが使えず、GOOGLEMAPが使用できなかったことは私の失敗であった。やはりスマホのコンパスだけでは道に迷ってしまう。
帰国後直ちに百度地図をインストールした。
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