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国際観光収支の黒字に意味があるのか?

観光基本法が全面改正された法制上の大きいな理由は、中央集権規定の廃止であった。農業基本法等戦後成立した基本法はみな中央集権規定が例文のように存在したが、それらの規定は順次基本法が全面改正されるたびに廃止されていった。最後に残ったものが観光基本法のそれであったが、観光基本法はあってもなくてもよい基本法であったため、中央集権規定が存在しても実害がなかったのである。

私が観光協会在職中、二階俊博代議士が観光基本法の改正について新年賀詞交換会で触れられた機会に、議員会館にお邪魔をして、観光基本法の問題点をご説明させていただいたことがある。佐伯宗義代議士が当時この中央集権規定がある観光基本法に大反対をしたことを申し上げると、二階先生は佐伯宗義代議士のことをご存じであった。

ふたを開けてみて、私も驚いたことがある。法律名が観光立国推進基本法になっていたことである。条文作成は衆議院の法制局職員であったろうが、大枠は二階代議士が決めたはずであり、字句「観光立国」を二階先生はご自身の著作でも用いておられるから、相当気に入っておられたのであろう。

さて、基本法の政策理念である。総花的な記述はさておき、外貨獲得の政策理念は日本の場合不要どころか、逆に国際問題視されかねない。自由な活動にゆだねるほうが良いと考えられる時代になっている。アウトバウンドもインバウンドもである。そこで、政策理念として、国、地域の誇りの理念が記述されることとなっていた。日本の国際的地位に比べて、日本を訪問する外客数があまりにも少ないという珍しい字句が前文に挿入されている。教育基本法を制定した直後の第一次安倍内閣の時である。観光基本法はもちろん議員提案ではあるが。

トランプ大統領が盛んに貿易赤字を問題視している。日本の観光研究者も観光収支の黒字の是非を頭から疑ってかからない者が多い。しかし、浅川雅嗣財務官は、『公研』2017年7月号で、二国間の貿易収支の黒字、赤字に着目することがどれほど意味があるのか、正直疑問なしとはしないと述べておられる。(浅川氏は私が海事産業課長時代に主計局の運輸省担当主査で、国際船舶制度の予算要求をさせていただいたことがある。)氏は、貿易が行われるその裏側で、それよりもはるかに巨大な額の資本取引が行われているわけだと述べられる。要は投資が多すぎて、貯蓄が足りないということだとバッサリ切り捨てておられる。

浅川氏の言葉を借りれば、日本の国際社会に占める地位を考えると、政策として、旅行収支の黒字に着目する意味がどれほど意味があるのかということにもなる。国際旅客運送収支はオープンスカイ政策により、ナショナルフラッグキャリア概念すら消滅している。頭数としての外客数が増加することは、日本の文化を見てもらうという視点では好ましいことであり、子供たちに自慢できることある。しかし、政治的には旅行客を送り出す方が力を持つことは間違いがない。モノの見方であるから仕方がないのである。

中国は、域外旅行客が2億人になると予想している。団体客は安売りツアーを規制する方針のようであるが、個人旅行は規制できず確実に伸びる。世界中の観光地が中国人旅行客の獲得競争に乗り出せば、中国の政治的力が増すことは仕方がないのである。

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