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須田寛「国鉄改革を顧る」(くらしのリサーチセンター)メモと国の交通施策への感想

公開日: : 最終更新日:2023/04/29 路銀、為替、金融、財政、税制

敬愛する須田寛氏の対談メモ。内容は既に知られていることではあるが、当事者が語ったものとしては数少ない貴重な資料。いずれオーラルヒストリーが発表され、政府高官等の更に詳しい資料が世の中に出てくると思うが、それまでは貴重な資料の一つであろう。

○国鉄運賃50%値上げ時を振り返り「新幹線の旅客数の変化を見ると、ピーク時は1975年で、すとんと落ちて1991年まで戻りません」と語る。75年末のスト権ストにつき「労働組合側は1日か2日やったら、国も国鉄も困ってスト権を与えるだろうと思っていたんですね。でもあまり困らなかった」「国鉄の労働争議なのに、国鉄には当事者能力がないので、そういう(政府と組合が話し合う)情けない状態になった」

ここのところは、私も当時運輸省鉄道監督局にいて、国鉄運賃法の改正を実際に担当し、スト権ストを目の当たりにしていたので懐かしい出来事。全日空の株がどうなるか観察していたところ、急騰したので自分も買っておけばよかったと思ったことを思い出す。はやり金もうけには向いていない役人だったのだろう。須田さんは旅客局総務課長でよく運輸省に顔を出されていたことを思い出す。また国会答弁が上手だったことも思い出される。

○実際には本州が一本化されなかったのはどうしてでしょうかという点には「本州だけそのままにしておいたら、また同じことを繰り返すと思われたのではないか」「いまおもえば、政府の分割民営化案でよかったのかもしれない」

私がその後JR東に出向した時に、国鉄改革の連判状組の一人であった若手のリーダー故内田氏が隣の机に座っておられ、国に押し付けられた借金を国に引き取ってもらった後は、再度JRは一本になるのだと語っておられたことを思い出す。しかし、一本になるときの中心であるJR東は、巨大東京圏をもち、他と一緒になる必要性を感じなかったので、その構想は立ち消えになった。もちろん、JR東海も西日本も程度の差はあれ同じであったろう。

○「ただ貨物を別会社にするのが良かったのか私にはわからない」「JR東海や北海道のように、貨物の依存度の高い会社は、貨物への持ち出しが多い」「東海の場合、本当に頂くべき使用料の半分くらいしかもらっていない」「第三セクターが各地にできますが、国が補助してフルコストを払う。貨物会社は今もって一人立ちできない体質」「地域別に分割して旅客会社に割り振った方がむしろ良かったのではないか」

貨物会社については、物流の勉強をしていて、当時心情的に別会社に賛成であった。日通の意向が強く働いたように思う。寺田さんという日通総研出身の人が広瀬真一氏(運輸・国鉄OBで元日通社長)の秘書的な仕事をしていたので、広瀬氏の意向が別会社であったように聞かされていた。しかし、私はその後JR東に出向し、やはり地域別の方がよかったと思うようになった。当時の副会長の山之内秀一郎氏も同じ考え方をされていた。貨物の取り分の半分は通運会社に行く構造で、日通とJR東の交渉であれば、日通に強く臨めるが、貨物会社では日通に強く臨めない。その結果無駄な税金が投入されてしまうことになった。

○5兆円で買わされたことに「東北上越、東海道、山陽の新幹線をそれぞれ営業係数99にするため、逆算して東海道を5兆円でかわされた」「JR東海はいまも2兆円の返済中。この債務がなければとうにリニアは着工している」
「当初は数年に一度値上げをする計画。バブルの一番景気が良かった時にスタートしたので、3~4年間で新幹線のお客様が3割も増加。結果的に値上げせずに済んだ」

この点の追加的な重要点は、JR東海は、国からの負担が少なければ、東海道新幹線運賃が更に安く設定されたか、あるいはリニアが早く開業することこととなったであろうから、東京・大阪間の航空輸送に大きな影響が出たはずであることである。羽田の発着枠や関西国際空港の問題の展開も大きく変化していたであろう。

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