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旅行業法の不思議② 宿泊引受義務と民泊(Airbnb)論議

Airbnbは、同社にとって最も成長率の高い市場である日本において、登録物件の近隣に住む住民が苦情を申し立てられるようにする予定であることを発表したという記事が、Newspicksで紹介されている。http://wired.jp/2016/03/16/airbnb-rate-neighbours-complain/
「うるさいゲスト」に対し周辺住民が苦情が申し立てられる機能を付加するという記事であり、NEWSPICKSのコメントは好意的なものが多かったように思う。
しかしことはそれほど単純ではない。Airbnbによるサービスが旅館業法の適用を受けるものとすると、宿泊契約引受義務がサービス提供者に課せられるからである。小樽で「外国人お断り」を実行した銭湯が裁判で敗訴し、慰謝料を支払わされたケースがある。銭湯だから引受義務はないから、営業停止にはならなかったが、名誉棄損に該当してしまった。従って新経団連は、周辺住民の苦情処理を考えて、宿泊引受義務の廃止を訴えている。私も、住と宿が相対化しており、引受義務は時代錯誤ではないかと思っている。そのうえで、旅館業法全体を見直し、規制緩和を実施すればいいと思っている。

さて、旅行業との関係であるが、実サービス提供者の宿泊機関は、現状において引受義務が課されている。それに対して、旅行業法では引受義務が規定されていない。営業の自由であり、旅行業務管理者試験においても、契約解除を含めてこの点が出題されている。旅行業者は嫌な客は断ろうと思えば断れるのである。Airbnbサービスは旅行業でもなく、情報取次業ということであれば、引受義務も当然かかってこない。従って苦情の多い顧客は取りつがないようにすることは問題がないということになる。旅行業であってもその点は同じであるが。

乗合運送機関は伝統的には運送引き受け義務が課されている。公共交通と言われる所以であり、乗車拒否問題が発生する。貸切バスは乗合ではないところから運送引受義務はないが、タクシーにはある。タクシーも貸切であるが、流し営業をしているからであろう。では、流しをしていないタクシー(車庫待ち)は引受義務はいらないのではないかという議論になる。貸切バスも乗合形態のもの(乗合タクシー)は引受義務があったほうがバランスはとれる。制度設計のほころびが少し出ているのである。

旅行業法では利用運送、利用宿泊についても規定している。これらの業務は実態が発生していないが、仮に存在するとすると、引受義務がないわけであるから、道路運送法とのバランスはさらに崩れることになる。私は実運送も含めて引受義務は廃止したほうがいいとおもっている。というより、営業は自由にできる体制にして、安全規制を徹底すればいいと思っているからである。

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