*

gコンテンツ協議会「ウェアラブル観光委員会」最終会議 3月4日

公開日: : 最終更新日:2023/05/28 脳科学と観光

言い出したはいいが、どうなることやらと思って始めた会議であったが、とりあえず「終わりよければすべてよし」であった。関係者の協力があったからである。

慶応大学の満倉教授が開発し、電通サイエンスジャムが実用化したウェアラブルデバイスの脳波計を活用して、観光資源に対する感情を測定しようという実験を行った。そのまとめの委員会を3月4日に六本木のジプテックの会議室で行ったのである。

満倉教授によれば人間の感情を表す脳波は数多くあるのだそうだが、簡易に測定できるものは今のところ「好き」「興味」「ストレス」「眠気」「集中」の五種類に限定されている。将来はもっと増加するであろう。「嫌い」を表す脳波は、万人が嫌だと感じる臭気をかがせ、その時に発生する脳波を測定することによりまとめているようであるが、まだ不確定のようである。「好き」の裏返しが「嫌い」ということではないところが面白い。実際、例の「くさや」やドリアンを好きと感じる文化もあるから、人間の感情の世界はまだまだ未知数なのかもしれない。

実証実験は予算や技術的制約もあり、留学生二人を含め被験者三人ということで実施した関係上、サンプル数が少ないから科学的ではないという批判を予想していた。事実そういう面は否定できないが、得られた結果に意味があるのではなく、実施手法に意味があるとすれば、今回の実験は成功であった。この手法を開発してゆけば、いずれ観光研究やマーケティング研究に一大革命を引き起こすであろう。

今回の実験では、ガイドがついているときとついていない時で脳波に違いが出た。ガイドが説明をすると興味度が高まるのである。リアルなガイドではなく、ガイドブックを事前に読んでいる人とそうでない人の違いもたぶん表れるのであろう。メンバーの一人であるJTBの方の報告では、ニューヨークメトロポリタン美術館では、入場料(任意であり25ドル程度)よりもツアーガイドの料金(ミュージアムハックツアー2時間59ドル)のほうが高いということであった。美術史を専攻した人、俳優等の独自の経歴を持つガイド集団が美術館と契約してユニークなガイドツアーを自主運営しているのである。そのニューヨークでは、全席が同一方向の窓側を向いているバスに観光客を乗車させ、走行中に街角で行っているストリートパフォーマンスを見させる「THE RIDE」があり、2時間74ドルだそうである。JTBも触発されて、浅草で70分5700円でエンタメバス「サムライ&忍者サファリ」を実施したようである。

いわゆる「歴史認識」も本人の実体験というよりもマスコミ等によりインプットされた情報であるから、ガイドブックによる影響を受けたものとかわらない。広島の原爆ドームを見たアメリカ人の脳波がスミソニアン博物館のエノラゲイを見たときの脳波と異なるとすると、それもやはり「ガイドブック」のせいである。原爆は多くのアメリカ人兵士の命を救ったものであるとの認識が刷り込まれている。その一方でアメリカのネイティヴからは開拓時代の虐殺批判が少ないと逆批判をあびているから複雑である。そのことが脳波測定により明らかにされると面白いと思っているが、現状ではまだ無理であろう。

関連記事

本山美彦著『人工知能と21世紀の資本主義』 + 人流アプリCONCURの登場

第6章(pp149-151)にナチスとイスラエルのことが記述されていた。ヤコブ・ラブキンの講演を基に

記事を読む

no image

書評『情動はこうしてつくられる』リサ・フェルドマン・バレット 紀伊国屋書店

参考になるアマゾンの書評の紹介 ➀  本書のサブタイトルにある「構成主義(const

記事を読む

no image

錯聴(auditory illusion) 柏野牧夫

マスキング可能性の法則 連続聴効果 視覚と同様に、錯聴(auditory illu

記事を読む

no image

聴覚   空間の解像度は視覚が強く、時間の分解度は聴覚が強い。人間の脳は、より信用できる方に重きを置いて最終決定する

人間の脳は、より信用できる方に重きを置いて最終決定する 聴覚が直接情動に訴えかけるのは、大脳皮質

記事を読む

no image

2019年11月9日日本学術会議シンポジウム「スポーツと脳科学」聴講

2019年11月9日日本学術会議シンポジウム「スポーツと脳科学」を聴講してきた。観光学も脳科学の

記事を読む

『眼の誕生』アンドリュー・パーカー 感覚器官の進化はおそらく脳よりも前だった。脳は処理すべき情報をもたらす感覚器より前には存在する必要がなかった

眼の発達に関して新しい役割を獲得する前には、異なった機能を持っていたはず しエダア

記事を読む

no image

保護中: 池谷裕二氏の一連の「脳と心」にかんする著作を読んだメモ

外の世界は「目」を通して第1視覚野に写し取られ、そのあと、色に反応する第4視覚野や動きを見る第5視覚

記事を読む

no image

書評 AIの進化が新たな局面を迎えた:GTP-3の衝撃

米国コロナ最前線と合衆国の本質(10)~AIの劇的な進展と政治利用の恐怖~ https://

記事を読む

no image

動画で考える人流観光学 カンブリア爆発  

https://youtu.be/dm276hMu6bU

記事を読む

no image

「食譜」という発想 学士會会報 2017-Ⅳ 「味を測る」 都甲潔

学士會会報はいつもながら素人の私には情報の宝庫である。観光資源の評価を感性を測定することで客観化しよ

記事を読む

no image
2025.11月24日 地球落穂ひろいの旅 南極旅行の基地・ウシュアイア ヴィーグル水道

アルゼンチンは、2014年1月に国連加盟国58番目の国としてブエノスア

no image
2025年11月23日 地球落穂ひろいの旅 マゼラン海峡

プンタアレナスからウシュアイアまでBIZBUSで移動。8時にPUQを出

2025年11月22日地球落穂ひろいの旅 プンタアレナス

旅程作成で、ウシュアイアとプンタアレナスの順序を考えた結果、パスクワか

2025年11月19日~21日 地球落穂ひろいの旅イースター島(ラパヌイ) 

チリへの訪問は2014年に国連加盟国 として訪問済み。イースタ

2025年11月17日 アメリカ合衆国(国連加盟国5か国目)ワシントン州(19番目の州) ポイントロバーツ

アメリカ合衆国は、アラスカ、ニューヨーク、(DC)、ヴァージニア、イリ

→もっと見る

PAGE TOP ↑