gコンテンツ協議会「ウェアラブル観光委員会」最終会議 3月4日
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最終更新日:2016/11/25
人流・観光政策への評論
言い出したはいいが、どうなることやらと思って始めた会議であったが、とりあえず「終わりよければすべてよし」であった。関係者の協力があったからである。
慶応大学の満倉教授が開発し、電通サイエンスジャムが実用化したウェアラブルデバイスの脳波計を活用して、観光資源に対する感情を測定しようという実験を行った。そのまとめの委員会を3月4日に六本木のジプテックの会議室で行ったのである。
満倉教授によれば人間の感情を表す脳波は数多くあるのだそうだが、簡易に測定できるものは今のところ「好き」「興味」「ストレス」「眠気」「集中」の五種類に限定されている。将来はもっと増加するであろう。「嫌い」を表す脳波は、万人が嫌だと感じる臭気をかがせ、その時に発生する脳波を測定することによりまとめているようであるが、まだ不確定のようである。「好き」の裏返しが「嫌い」ということではないところが面白い。実際、例の「くさや」やドリアンを好きと感じる文化もあるから、人間の感情の世界はまだまだ未知数なのかもしれない。
実証実験は予算や技術的制約もあり、留学生二人を含め被験者三人ということで実施した関係上、サンプル数が少ないから科学的ではないという批判を予想していた。事実そういう面は否定できないが、得られた結果に意味があるのではなく、実施手法に意味があるとすれば、今回の実験は成功であった。この手法を開発してゆけば、いずれ観光研究やマーケティング研究に一大革命を引き起こすであろう。
今回の実験では、ガイドがついているときとついていない時で脳波に違いが出た。ガイドが説明をすると興味度が高まるのである。リアルなガイドではなく、ガイドブックを事前に読んでいる人とそうでない人の違いもたぶん表れるのであろう。メンバーの一人であるJTBの方の報告では、ニューヨークメトロポリタン美術館では、入場料(任意であり25ドル程度)よりもツアーガイドの料金(ミュージアムハックツアー2時間59ドル)のほうが高いということであった。美術史を専攻した人、俳優等の独自の経歴を持つガイド集団が美術館と契約してユニークなガイドツアーを自主運営しているのである。そのニューヨークでは、全席が同一方向の窓側を向いているバスに観光客を乗車させ、走行中に街角で行っているストリートパフォーマンスを見させる「THE RIDE」があり、2時間74ドルだそうである。JTBも触発されて、浅草で70分5700円でエンタメバス「サムライ&忍者サファリ」を実施したようである。
いわゆる「歴史認識」も本人の実体験というよりもマスコミ等によりインプットされた情報であるから、ガイドブックによる影響を受けたものとかわらない。広島の原爆ドームを見たアメリカ人の脳波がスミソニアン博物館のエノラゲイを見たときの脳波と異なるとすると、それもやはり「ガイドブック」のせいである。原爆は多くのアメリカ人兵士の命を救ったものであるとの認識が刷り込まれている。その一方でアメリカのネイティヴからは開拓時代の虐殺批判が少ないと逆批判をあびているから複雑である。そのことが脳波測定により明らかにされると面白いと思っているが、現状ではまだ無理であろう。
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