*

『戦後経済史は嘘ばかり』高橋洋一

公開日: : 最終更新日:2023/05/19 人口、地域、, 観光学評論等

城山三郎の著作「官僚たちの夏」に代表される高度経済成長期の通産省に代表される霞が関の役割の神話は、すでに学術的には三輪芳朗東大経済学部名誉教授によって否定されている。私も観光学を教える立場になり改めて調べなおして、三輪教授の著作を読んで理解した次第であるが、公務員の仕事に意義を感じて霞が関に就職した以前の私は勿論のこと、未だに多くの人がその神話を信じている面がある。あらためて、高橋洋一氏の本書を読んでみて、その発信力は勿論、その説得力には三輪教授にはない実務面の材料が多く、大いに参考になった。なお、戦後の海運政策に関することで、運輸省海事産業課長時代に橋本寿明東大教授にお目にかかったことがあるが、お若くして亡くなられ残念なことである。高橋洋一説に関してどう評価されるか聞いてみたいものであるが。

以下主な高橋氏の解説

【通貨政策】戦後の1ドル360円は、固定通貨制度に基づくものではなく、米国の了解のもと、絶えず大蔵省の介入の元に維持されてきたものである。大蔵省が実質介入を廃止したのは、プラザ合意後の事である。この実体経済からして大いに円安であった1ドル360円という通貨政策が.輸出促進による日本の高度経済成長を可能としたのであり、通産省や運輸省の政策はむしろ足を引っ張っていたのである。このことを公取委出向時代に、規制されてきた業界等の声から理解した。
【財政政策とマンデルフレミング理論】 現在の変動相場制の元、国の財政政策で支出を増やしても、その効果は海外に流れるだけ。バブル期前後から、巨大な公共投資を実施したが、デフレ脱却ができなかったことからもわかるだろう。金融政策しか有効策はない。なお、当時のバブルは資産バブルであり、物価は安定していた。だから日銀の金融引き締めは失敗であった。
【金融政策と財政政策】 傾斜生産方式、所得倍増などいずれも政策効果はなかった。むしろこれらは計画以上に成長した場合の弊害が予想され、引き締めの逆効果の危険性があった。しかし、傾斜生産方式は、結果としてアメリカからの経済援助の引き出し効果があり、その意味では有効であった。所得倍増計画はスローガンで、いまだに具体的施策は思い浮かばない。
 この点は所得倍増計画をイメージして作成されたテンミリオン(日本人海外旅行者倍増計画)も同様である。この計画に携わった当時、住田正二氏は何もしなくても倍増するのだから計画などいらないと語られたことに対して、国際運輸観光局長(当時)はだから実施するのだと答えられたと伝承されているが、両者の考え方の違いが表れていて興味深い。なお、金融政策と金融規制は別のもの。前者は日銀の公定歩合政策であり、後者は、大蔵省が行う銀行法等に基づくものである。
【インフレ、デフレ】日本以外は失業率を問題にする。完全雇用の元では賃銀は上昇するから、当然インフレになる。1.2パーセントの失業率は完全雇用の元でもありえるから、インフレ目標はその上の2パーセント程度であり、こうなるように金融政策を実施すべき。
【国の借金と埋蔵金】国などが発行している公債が全て赤字と認識するべきではなく、バランスシートで判断すべき。国には資産があり、問題はない。そうするとすぐには資産を売却できないとの反論が出るが、資産の八割は金融資産だから売却は可能である。それができないのは天下り先がなくなるからだ。

関連記事

電子出版事始め『人流・観光学概論』

大学のテキストで使用するつもりであった『人流・観光学概論』、ウィネットの好意で、校正済みのPDFを

記事を読む

no image

観光とツーリズム~日本大百科全書(ニッポニカ)の解説に関する若干の疑問~

日本大百科全書には観光に関する記述があるが(https://kotobank.jp/word/%E8

記事を読む

no image

ヴィアレッジョ スーパーヨットの街

地方創生は無理をしないで伝統を発展させれば、人口6万の町でもトランプさんはヨットを注文してくるのです

記事を読む

no image

7月21日 第二回観光ウェアラブル委員会を開催して

満倉靖恵慶応大学理工学部准教授と㈱ナビタイムジャパン野津直樹氏に講演を頂いた。 満倉先生は「脳

記事を読む

no image

「旅館の諸相とその変遷について」「近代ホテルにおける「和風」の変遷とその諸相」を読んで

溝尾良隆立教大学名誉教授が中心となっている観光研究者の集まりが7月8日池袋で開催された。コロナ後の久

記事を読む

幸田露伴『一国の首都』明治32年 都議会議員和田宗春氏の現代語訳と岩波文庫の原書で読む。港区図書館にある。 

幸田露伴は私の世代の受験生ならだれでも知っている文学者。でも理系の人でもあり、首都論を展開してい

記事を読む

no image

Ctripの空予約騒動について 大山鳴動に近い騒ぎ方への反省

「宿泊サイト、予約しない部屋を販売」といった表題でテレビが取り上げ、関係業界内ではやや炎上気味であ

記事を読む

no image

中国の観光アウトバウンド政策 公研No.675 pp45-46

倉田徹立教大学法学部教授 1997年にアジア通貨危機、2003年にSARS流行発生時、香港経

記事を読む

no image

メンタル統合 

人類の文化的躍進のきっかけは、7万年前に起きた「脳の突然変異」だった:研究結果 https:

記事を読む

no image

「植民地朝鮮における朝鮮総督府の観光政策」李良姫(メモ)

植民地朝鮮における朝鮮総督府の観光政策 李    良 姫 『北東アジア研究』第13号(2007年3月

記事を読む

no image
旅系Youtube 秘境関係

https://youtu.be/mTpbkUc5Eok?si=7J4

no image
中国旅行のみどころ Youtube

https://youtu.be/OiUr-1yNEaI?si=5U1

越前が、越中・越後と接していないのはなぜですか?

https://jp.quora.com/%E8%B6%8A%E5%8

no image
靴を脱ぐ国と脱がない国の世界地図

https://www.facebook.com/share/p/1A

デンバーからソルトレイクシティー

シカゴからソルトレイクシティーにcoachで向かい

→もっと見る

PAGE TOP ↑