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はやり言葉になるか『Maas』日経BP社を読んで

公開日: : 最終更新日:2019/02/10 用語「人流」「観光」「ツーリズム」「ツーリスト」

はやり言葉になるかどうかだが、UberやRide-Shareほどのインパクトはないのだろう。とにかくライドシェアはラスベガスのホテルの車寄せでも、伊丹空港でも言葉として見かけるようになったからすごい。タクシー、バスと並んで使われている言葉になっているのである。

Maasとはマイカーと同等かそれ以上の魅力的な交通サービスを提供して持続可能な社会を構築してゆこうという概念。単一の交通モードではなく、鉄道、バス、タクシー、レンタカーといった従来の交通サービスやカーシェアリング、自転車シェアリング、配車サービスなどの新しい交通サービスをすべて統合して一つのスマートフォンアプリを通じて、ルート検索、予約、決済機能にアクセスできる

期待して読んでみたが、マスコミ用にはこれでいいのかもしれないが、国鉄問題華やかりしころの角本良平さんが読んだら厳しい意見を出したであろう。角本さん流に言えば社会が旅客だけで構築されていると思い込んでいるところに問題がある。社会は必ず、物流が必要で、俗にいうマイカーは人の移動、物の移動をいつでも好きな時に使用できるところに便利さがあり、効用も最大限発揮されるのである。都市は大量の消費物資と廃棄物資の輸送を前提としてなりたち、地方では、郵便を出しに行くものマイカーでゆく。はがきというモノを運んでいるのである。しかも物流概念は輸送に加えて保管、在庫が重要な概念を構成している。人の場合も物流の保管、在庫に該当する宿泊、居住を移動とともに考えることができる時代になってきており、私はこれを、単純な言葉であるが、人流としているのである。つまり、居住、移動、宿泊、その他の行動(観光、労働等)を一連の流れとして満足のいくサービスを確保する考え方であり、英語でとりあえずHuman Logisticsといっているが、造語の力に乏しく苦戦している。しかし、Maasよりは論理的であると思っている。

 国鉄が赤字になったのは、マイカーだとして、当時公共交通税を運輸省が提案したことがある。とにかく、マイカーはエネルギーを使用して持続可能なものではないという思い込みがある。マイカーよりも、ほとんど人が乗っていない田舎の鉄道やバスの方が、エネルギー効率が悪いと当時から反論があった。JR東日本の最大の赤字路線は岩泉線であった。JRに出向した時に、なぜこれが残ってしまったのか不思議に思い、現地に行ってみてよくわかった。バスも通らないほどの人流しかないところであり、代替交通機関がないので鉄道が廃止できなかったのである。今回の地震でようやく廃止になったようである。持続可能性を言うなら、即刻JR北海道から即刻閑散鉄道路線を解放してあげ、バスなりマイカーの共同使用を促進することが先である。

 レンタカーが並べられているが、レンタカーは法令では自家用自動車である。マイカーと同じである。自家用車を有料で人に貸すだけのことであり、エネルギー効率は乗車人員如何である。営業用運送自動車もカーリースを利用している場合がある。運転代行も自家用車である。

 さらに専門的なるが、鉄道とバスの違いも法的な違いを言えば、ガイドされているか否かである。トロリーバスは法的には無軌条電車、無軌道電車という。私はそのむかし、自動運転車が実用化されると、道路側の何らかのガイド性が働くので、電波のレールがあることになり、鉄道に分類されるのではないかという論文を書いたことがある。鉄道も最初は、個別輸送機関として登場し、そののち、レールと車両が一体化していったのであるから、道路を走る自動運転車は元に戻っただけである。当時は建設省と運輸省は別の役所であったから、ガソリン税をめぐって所管争いになるのであるから、重要な論点であった。

「持続可能性」を標榜してマイカー攻撃をするのであれば、まず、マイカーの相乗りを促進すればいい。ヒッチハイクは持続可能的であるから、Maasに加えるべきであろう。既に相乗りアプリは提供されている。実費程度の有料にすればさらに促進されるであろう。CREWは配車アプリでこれを実行している。タクシーよりは乗車効率が良くなると思う。自動運転車の時代になれば、安全性の問題で、自家用、営業用という概念は消滅するから、すべての車や移動手段の効率的運用システムということになるのであろう。

 私は「モバイル交通革命」を出版した時、まだ携帯電話段階であったが、GPSが導入され始めたころであり、乗合と貸切の境目をなくすことができる技術が出てきたと思ったのである。本来、マイカーが便利で、次にタクシーであり、乗合系の乗り物は「時刻表停車場方式」にならざるを得ない。しかしすでに物流ではサプライチェーンマネジメント(お届けするビジネスモデル) が当たり前になってきており、道路運送法も改正され、区域トラックの混載は自由になっていた(今の人は信じられないだろうが、改正前の貨物運送は今のタクシーと同じで混載は禁止されていたのである。)人流もようやくサプライチェーンマネジメントができるようになった来たというか、デマンドチェーンマネジメント(お迎えに行くビジネスもである)ができるようになってきたのである。そこで、バスとタクシーのデマケを変えることができるようになってきたと記述したのである。『Maas』はあいかわらず、バス、タクシー、レンタカー等を並列して出してきており、きちんと法体系を理解してから主張しないと、すぐにけたぐりにあってしまうであろう。

 バスとタクシーのデマケを変えるのは力業が必要で、すぐには無理であるから、既存の制度を活用すればできるということをわかってもらうため、パッケージツアーの活用を主張したのである。歩合制賃金体系も障壁なるから、定額制乗り放題にしないとできないと記述したのである。運転手は定額賃金になるのである。今では定期購読のサブスクリプションという字句が該当するようである。

 2000年当時、携帯が普及したこともあり、フェリー等でも間際予約ができるようになってきていた。不定期船を、定期船の隣のバースに配船して、電話予約で団体に仕立てて、輸送を始めていたので、問題にはなっていた。高速バスも始まっていた。軽井沢の事故はその当時から、労務管理をしっかりしないと予想できたのである。今なら、運転手が集まらないから、過酷な勤務は強制できないであろう。過積載のトラック対策と同じで、営業用も自家用も等しくバスの連続運転の禁止を道交法で規制すればいいのである。

 アプリを通じてルート検索、予約、決済ができるようになると便利であることは間違いがない。そのうちGoogleが便利なものを提供してくるだろう。税金を使用しなくても出来上がる。調査費を使っても喜ぶのはコンサルタントだけである。

 私は、2000年に、全国の鉄道、空港を走破した。鉄道はJRの時刻表をベースに、パソコンで各地のバス等のダイヤを調べた。あの時刻表も相当な情報量があり、鉄道と主要バス路線は時刻が出ている。でも効率的に回ろうと思うと、乗り換え時間が気になるものである。大阪市交通局の地下鉄時刻表がわからず、難波での地下鉄、JR乗り換えに数分の違いが微妙な時があったのでよく覚えている。当時の交通局はPDFでアップしているものだから、立ち上げるのにずいぶん時間がかかったことを覚えている。今のような時刻表検索があればいいと思っていたら、ジョルダンの佐藤さんが立ち上げ大成功させた。

 もちろん、予約、決済もあると便利である。そこまで行くと、まさに旅行業なのである。当時、JTBが主導すればいいと思っていたが、JTBも腰が重く、私がJTBにお世話になった縁もあり、ようやくJERONタクシーが始まったが、ノロノロ運転である。それよりも驚いたのは、UberでありHEILLOであった。はやり同じようなことを考えている者が地球上にはいるものである。小役人の私にはとてもビジネスなどできないが、ビジネス感覚の優れた人は世界を動かせるのである。

 フィンランドは、ロンドンでのHEILLOの調査の帰りに立ち寄った。当時は、KUTSUPLUSというモバイル配車システムが公共バスに導入されていたので、見に行ったのであるが、大したことはなかった。それから、数年ののちにMaasに進化したということで、チャンスがあれば、KUTSUPLUSをどう乗り越えたのか聞いてみたい。

 思えば「モバイル交通革命」から20年経過するとずいぶん変化するものである。泊まり放題、着放題、食べ放題とサブスクリプションのメニューが増えだした。カモディティといわれる商品は大量廃棄が問題視されるくらいであるから、サブスクリプションに向かうのであろうか。そうなれば、ベーシックインカムを組み合わせれば、共産主義社会が実現できる。フィンランドはそのベーシックインカムも導入していると聞くので、ちょうどよい機会である。昔、講演でそのことをしゃべろうとしたら、主催者から共産主義だけはやめてくれと言われた。その時は共有社会と言い直しておいたが、それはどちらでもいいのである。世界では、コルホーズやキブツ、山岸牧場と様々な試みが挫折しているが、強制的にするのではなく、市場を通じて実現できれば、革命など、モバイルやらモビリティ程度の話で使用すればいいことになる。

フィンランドのベーシックインカムの記事

https://news.yahoo.co.jp/byline/kimuramasato/20190209-00114248/

画像

日本の名目GDPは現在ドイツの1996年あたりですから、失われた20年、30年なのでしょう。しかも東京を外せば、日本の地方の現状は、フィンランドの1990年代と同じになりますから、名目では大変な差がついてしまっています。日本をおとずれる海外旅行者が日本は安いと思うはずです。

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