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観光学を考える 『脳科学の教科書 神経編・こころ編』岩波書店 理化学研究所脳科学総合研究センター編 をよんで

図書館でこの二冊を借りてきて一気に読む。岩波ジュニア選書だから、子供が読む本だけれど私にはちょうどいい。

観光学はいずれ脳科学に収斂されるのではないかという自説をますます確信した。人間の言語機能の背景にある法則や規則を分析して、それを脳の構造と機能に結びつけようとするのは当たり前のようになっているから、言語学は脳神経学に収斂されるとも読める内容である。観光学は非言語情報も取り扱っているのであるからなおさらである。情動や感情は動物が直面した場面で最適な行動選択をするために規範だったはずである。それがどうして不道徳な行動選択につながってしまうのかという設問にも、法律学では、そもそも道徳や倫理とは何なのかという答えが必要であるが、私の主張する観光学は刺激とか興味であるから、相性がいいのである。

神経編
p.60-63 脊椎動物の脳の進化  1968年 ポール・マックリーンの仮説 脳の三位一体的構造仮説 爬虫類脳に情動をつかさどる哺乳類脳がかぶさり、その上に理性をつかさどる新哺乳類脳ができた  現在は否定されている  基本的な脳の領域はどの脊椎動物でも共通

p.105 地球上には40万種もの匂いを発する分子が存在 人間でも数千種類のにおいをかぎ分けられる 匂い分子の化学構造の特徴を「匂い地図」として表現しているだけ

p.130  単細胞動物は「感覚」と「運動」が一つの細胞の中で一連の反応として起こっている。進化するにつれて体が多細胞で作られ、外界を感覚する部分と運動する部分が分離、両者をつなぐ構造が必要となり神経系がはじまる。中枢神経が生まれ上位中枢・脳が生まれる。

p.204 自転車の乗り方を覚えるといった技能も記憶の一つである。子育てのように、一件本能に見える行動でも、実は学習する必要がある。最近では「本能」という言葉は以前ほどは気軽には使われない

こころ編
p.48 海馬は記憶に関係 ロンドンのタクシードライバーは海馬が大きい

p.87 言語学と脳神経科学  人間の言語機能の背景にある法則や規則を分析して、それを脳の構造と機能に結びつけようとするのは当たり前のようになっている
p.89-90 1950年代になって、言語それ自体の構造を客観的に科学する態度からもう一歩踏み込んで「なぜ、人間は言語を使いこなして、様々な精神活動を実現することができるのか」人間言語に特有な脳機能である「生成文法」は仮説であるが、最近の生成文法理論は語彙目録(レキシコン)「計算システム」から成り立っていて、それぞれが実在する脳内基盤をもっていると考える。最近になって、このような言語学の流れと脳神経科学の接点が明らかになる。
語彙項目の貯蔵庫のレキシコンには左側頭葉中下回から内側面かけての比呂ピ範囲が関係しているとされている。レキシコンから語彙を選択して計算システムに入れる操作には。左上側頭回後部から頭頂葉下部の領域、すなわちウェルニッケ野から角回かけての領域がかかわっていると推定されている。計算システムにおける文法構造などの操作にはブローカ野のかか割が大きいと推定されている。この脳神経組織の総体こそ、生成文法理論が提案する言語獲得装置の神経学的基盤であると考えられる。 

p.97 言語の起源と進化 人間の脳に言語が出現したのは、前適用した様々な機能を統合する余裕があったため(創発説)
p.134 不快な感情に関わる「偏桃体」を中心とする神経回路と、快い感情に関わる「側坐核」を中心とする神経回路が主な役割を担っている
p.141 感情 意識化された情動
p.144 理性的判断は感情を抑えて取り組むべきだという一般的な理解は、必ずしも常には的を得ていない
p.146 人間社会とは、実態ある物理法則から乖離した、人間の精神世界の中にのみ抽象的に存在する「象徴的世界」 物理的に計測できるものではない
p.147 感情の階層性  人間の社会的感情あるいは二次感情は現代の自然科学的技術では計測不可能な精神現象  
p.148 しかし、この環境にあっても適応的行動は存在する。社会的に回避、是認すべき行動があることは、物理的環境における生物学的行動と全く同じ
p.150 人間どうしの相互作用の吟味検討は現時点では人文科学が取り扱うテーマ
p.160  情動や感情は動物が直面した場面で最適な行動選択をするために規範だったはず。それがどうして不道徳な行動選択につながってしまうのか。そもそも道徳や倫理とは何なのか

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