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世界人流観光施策風土記 チベット旅行の検討から見えてきたこと

公開日: : 最終更新日:2023/06/02 躾、接遇

物流行政をしていたころ、港湾運送事業者が、貿易手続きが複雑なことが自分たちの仕事が存在する理由だとして説明していたことがある。面倒な手続きを商社はしないからだ。私は貿易手続簡易化協会関係の仕事で当時のレベルのオンライン化を進めていたが、役所の目的と業界の利害が完全に離反している事例であった。

9月にマニラにタクシーの調査に出かけるチャンスがあり、帰路麗江とラサに立ち寄る計画を立てた。麗江はCTRIPを使えば簡単に旅程が立てられる。日本よりも便利である。問題はラサで、チベット入境には許可証を必要とする。チベットは外国人の政治活動を監視する必要があり、外国人は滞在中はガイドをつけて行動しなければならない。相撲茶屋と同じく、桟敷の販売はお弁当等とセットになっており、高くつくことは想定される。チベットの場合は、ホテルに空港送迎が付くようだ(断ってもいいのかもしれないが確認していない)。いわゆるパッケージツアーを購入することになる。中国製のパックをCTRIPで直接申し込んでもいいのだろうがリスクもあり、結局日本の旅行会社に受注型企画旅行として申し込むことになる。

神保町のS社は、チベット旅行の老舗と銘打っているものの、はなから自社のパックしか売る気はないようであった。ネットでは個人旅行も実施するように出ているのであるが、私の応対をした担当職員は、連絡が悪いのか、個人旅行といっているのに、パックのパンフを見せて、これでないとできないという返事であった。日本発のパックを購入するなら、時間に余裕のある時のことで、受注型企画旅行を作ってほしい旨を伝えると、3日後にメールで回答するということであった。
回答は意外に早く、当日すぐに四つ星ホテルで約21万円という返事であった。後述するY社が2日かかっているのだから、調べたのか疑わしい。ガイド料(多分日本語)が入っているのかも不明であり、詳細を問い直すと、調べていないことがわかってしまうのか、引き受けられないので他の旅行業者に当たって欲しいという回答であった。要するに個人手配は引き受けられないという当初の姿勢を改めて伝えてきただけであった。

S社の対応は想定内であったので、その足で予定の平河町のY社を訪問した。Y社は講演会等にも参加した経験もあり、イスラエルやバルカンツアーにも参加したことがあるなじみのところである。窓口は個人旅行担当者で、同じ条件で依頼をした。ポタラ宮殿が予約制なので、2泊3日を考えていること、空港送迎、今度は宿は三ツ星をお願いした。その結果2日後に現地からの返事で、18万円であるとのことであった。ガイドは3日間べったり張り付くことは仕方がない(訂正のメールがYから入って確認)。食事等がどうなっているかはYでもわからないということであった。現地の情報であることだけは間違いがないようだ。

結論から言って、個人旅行は割高になることは仕方がないが、チベット場合30万円程度で日本発のもっと充実したツアーが催行されているから、何時でもチャンスはあるから、無理をしてラサ限定の2泊3日の旅(航空運賃除き)に申し込むことはないとして、Y社には断りのメールを入れた。

私の海外旅行経験では、一日ガイドの英語ドラーバーの料金は、2万から3万である。ホテルはランクによる。ラサの場合、ガイドとドライバーが別なのかもしれない。ホテルはCTRIPでも出ているから透明である。入国許可証の費用は手数料を入れても1~2万円であろう。ガイドはマチュピチュでも、少数民族の職場確保的制度があって、必ずつけろということもあるから、これも仕方がない。私の計算では、高くても10万円程度と踏んでいたので、法外に高いと感じたのである。

チベット旅行が手続きが面倒であることは中国政府の方針であるから仕方がない。面倒であるがゆえに、CTRIPを使った外国人の旅行はありえず、旅行会社のパックが販売できるということになるから、貿易手続の話と類似する。しかしそのことと、窓口の応対はまた別である。次回チベット旅行のパックを購入するときは、Y社に依頼したいと思うのは
人情である。

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