『金語楼の子宝騒動』(「あきれた娘たち」縮尺版)少子高齢化を想像できなかった時代の映画
公開日:
:
最終更新日:2023/05/28
出版、講義資料, 動画で考える人流観光学
1949年新東宝映画 私の生まれた年である。嫁入り道具に風呂敷で避妊薬を包むシーンがある。優生保護法がまだ施行されていない時代
筋書は次の通り
さる銀行の小使である泉山金太郎は戦時中の生めよふやせよがたたって、貧乏暮しに十二人の子持ちで、おまけに三人の孫まである。代用食もまともに食べられないのでボンセンベイを昼のべんとうにして金太郎はせがれや娘たちと毎日勤めに出て行くのである。金太郎の女房のおみよは毎日の配給ものの金に悩みながらも、子供たちの生長を楽しみにして家にじっとしているばかり。今朝家を出る時英和辞典がほしいと駄々をこねた六女で女学生のさかえは、神田の本屋で辞典を万引きし、現物を与太者学生に見つけられて暴行を受ける。末っ子の十三子は下品な流行歌を歌い先生に叱られ、孫の良太は隣家の佐山長蔵の庭の胡瓜を盗ってねじこまれる。金太郎は銀行の金を運ぶ途中暴漢におそわれ、幸い被害はなかったがいや気がさして退職金をもらってやめてしまう。金太郎はこの金でアイスキャンデー屋を始めたが、ある日空地で野球をやっている長男一郎を発見、問いただすと会社が一月ばかり前につぶれ、毎日女房にだまって職をさがしているのだという。こうした悲劇の連続に金太郎は思わずカッとして戦時中にもらった子宝家族の表彰状と記念写真を破ってしまう。夏になって海岸で水着の集団見合があると聞いた金太郎は次女つぎ子の相手を見つけようと探しまわり、一方長蔵も息子の武夫の候補者を見つけに出かけるが、とっくに見染めた武夫とつぎ子は親爺たちの心配をよそに意気投合してしまう。ここで金太郎と長蔵の親同志の話合いになるが生む子供の数のことで意見対立してついにケンカ別れになってしまう。やがて末っ子の十三子が叔母の家にもらわれて行き、長男一郎一家は友人の招きに応じて北海道の牧場に行くことにきまる。五女の末子はインチキ商事会社につとめているうち好色の社長木田の自由になり、あげくの果て妊娠して捨てられる。こうした騒動の中におみよが倒れ、武夫のつぎ子に対する恋愛の情はますます濃くなる。これを知った長蔵は息子のために気持を納め、木田が彼の甥であるのを利用して末子と木田の仲をうまくまとめる。おみよの臨終の席には木田と末子、武夫とつぎ子の二組の新しい息子がひざをそろえ、復員して来た三男三郎もかけつけた。「子供が何人になったかもう勘定も出来ない」とおみよは眼をとじた。新婚旅行に出発するつぎ子の手に、金太郎は包紙を玉手箱だといって渡した。それは避妊薬であった。
関連記事
-
-
『飛躍への挑戦』葛西敬之著
図書館で取り寄せて読んだ。国鉄改革については、多くの公表著作物に加え、これからオーラルヒストリが世
-
-
シュリューマン旅行記 清国・日本 日本人の宗教観
『シュリューマン旅行記 清国・日本』石井和子訳 シュリューマンは1865年世界漫遊の旅に出かけ日
-
-
「若者の海外旅行離れ」という 業界人、研究者の思い込み
『「若者の海外旅行離れ」を読み解く:観光行動論からのアプローチ』という法律文化社から出版された書
-
-
伝統も歴史も後から作られる 『戦国と宗教』を読んで
横浜市立大学の観光振興論の講義ノート「観光資源論」を作成するため、大学図書館で岩波新書の「戦国と宗
-
-
『2050年のメディア』下山進
日本の新聞がこの10年で1000万部の部数を失っていることを知り、2018年4月より、慶應義塾大学
-
-
動画で考える人流観光学 核融合
核融合 https://youtu.be/A1PCsI7snkY https
-
-
学士会報926号特集 「混迷の中東・欧州をトルコから読み解く」「EUはどこに向かうのか」読後メモ
「混迷の中東」内藤正典 化学兵器の使用はアサド政権の犯行。フセインと違い一切証拠を残さないが、イス
-
-
Quora ヨーロッパ人による境界がなかった場合には、今日のアフリカには幾つくらいの国があったと思いますか? 欧州にはバスク語しか残らなかった
https://youtu.be/i28l-t4H1GM ヨーロッパ人による境界がなかっ
-
-
国際観光局ができた1930年代の状勢 『戦前日本の「グローバリズム」』
大東亜共栄圏の虚構を指摘 「バダヴィアに派遣された小林一三商相」国内世論の啓発に努める小林は
-
-
『音楽好きな脳』レヴィティン 『変化の旋律』エリザベス・タターン
キューバをはじめ駆け足でカリブ海の一部を回ってきて、音楽と観光について改めて認識を深めることができた