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日本社会党・総評の軌跡と内実 (20人のオーラル・ヒストリー) 単行本 – 2019/4/8 五十嵐 仁 (著), 木下 真志 (著), 法政大学大原社会問題研究所 (著)

公開日: : 最終更新日:2023/05/21 出版・講義資料

港区図書館の蔵書にあり、閲覧。国鉄再建に関し、「公共企業体(国鉄)職員にスト権を与えるか否か」の政府の対応方針を見誤ったか、裏切られたかはわからないが、本書では、国鉄労組側からの見方が富塚氏が語られていて面白い。スト権ストに関して自民党のタカ派の声がハト派の声を押しつぶしたからであろうが、その結果民営化に行き着くことになったことの歴史の評価はまだ先かもしれない。その時私は運輸省鉄道監督局に勤務しており、偶然局内の課長の最寄り駅での通勤風景が朝刊一面にでており、職員がそれを発見し話題になったことを思い出す。ご本人もうつされていたことに気が付かなったようだった。

臨調委員の加藤寛慶応大教授は、民営化の旗振り役のようにもてはやされ、運輸省職員も海外調査で最重要人物としてアテンドをしたことは身近で見分していた。実は加藤先生は国鉄組合側からは、最もスト権につき理解のある学者だと思われていたから、臨調についても楽観視していたようだが、ふたを開けてみれば全く逆だったこともこの書物に記述されている。真相は他のオーラルヒストリーが開示されるまではわからないが、私にとっては、加藤先生の話は初耳であったから、驚きであった。

当時私が聞かされていた社会党に関しては、国鉄副総裁が国鉄職員出身の社会党政治家の選挙の面倒を見ており、総裁以下の当局幹部が自民党の面倒を見ていたということぐらいであった。そう考えれば、国鉄という組織はすごい組織であり、残念ながらこの時点の運輸省鉄道監督局は国鉄の霞が関出張所的であった。

飛鳥田さんが、委員長になった時、運輸省職員の西村さんという方が秘書官になられた。西村さんは、自動車局保障課で一緒だったかたで、寡黙な人望のある方だった。後に運輸省労働組合の専従になられたから、その縁で飛鳥田氏の秘書になられたのであろう。運輸省にとってはいいパイプ役であったと思う。

本書に登場する伊藤茂さんは、運輸大臣になられたとき、私は広報室長をしていたので、週二回の記者会見でお仕えした。大臣になることは前の週に細川総理から言われたといっておられた。山形在住の母親が、せがれが大臣になったということを方言で嬉しそうに話されていたのが印象的。官房長が安心して記者会見を聞いておれると話されていたように、記者さんからは面白くなかったかもしれない。二階俊博政務次官の方に取材陣があつまっていたように思う。伊藤大臣は退任時、優秀な官房長がサポートしてくれたとかたっていた。成田空港の一坪地主に関連して、運輸大臣として成田にどう対応するかいやな質問も受けていた。答えが間違っていた時は、すぐに自分の非を認めて謝罪されていたことも印象深い。運輸行政が困らないようにされたのであろう。大臣の最後の仕事は名古屋で発生した中華航空機事故。すでに退任は決まっていたが、きちんとされていた。選挙のため、歳費の一年分は貯金をして、残りで活動していたともはなされていた。社会党だから質素だったのだろう。陸軍士官学校では、偶然私の父親が共感をしていた時代に在学されていたようだ。

アマゾン書評1

今はなき「社会党-総評ブロック」に関わった20人からの聞き取り。
社会党でいえば、構造改革論争・安保・市民運動・反戦青年委員会・成田三原則・飛鳥田横浜市政・社会主義協会(規制)・新宣言・土井ブーム・社会党の防衛政策・非自民連立政権・村山政権・・・、総評でいえば、高野総評・ぐるみ闘争、春闘・太田-岩井ライン・三池・安保・構造改革・労戦・スト権スト・国民春闘・社会保障(中央社保協)・総評解散・・・、あわせて日本共産党の労働組合部(労働局)の活動。などのトピックスが余すことなく当事者から語られる。
証言者は、伊藤茂、曽我祐次、加藤宣幸、高見圭司、前田哲男、塚田義彦、公文昭夫、富塚三夫・・・など。
聞き取りの対象を「裏方として実際上の活動を担った『スタッフ(非議員専従など)』を重視して選考」(本書より)したので、時々のトピックス・選択の「裏舞台」がよくわかる。例えば、「構造改革論がなぜ、受け入れられなかったのか」「協会規制について、当の社会主義協会はどう受け止めていたのか」など。村山政権時代の政策立案過程も興味深く読んだ。証言者の方が出会った方の人物評(太田薫や飛鳥田一雄など)も面白く読んだ。前田哲男が指摘する、オルタナティブな安全保障の在り方を政策として提示できなかったという指摘は、今の現状を鑑みて重い。
それぞれの証言を読むたびに、「もう少し何とかならなかったのか」「あの時こういう選択していれば、今よりましな状況をつくることができたのではないか」、そういう思いがずっとつきまとう。総評解散から3分の1世紀。社会党がなくなって4分の1世紀。過ぎ去った時はあまりにも長い

 

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