*

サイパンの核

サイパン(北マリアナ諸島自治連邦区)における核兵器の取り扱いは、**「米国本土とほぼ同等の連邦法」「現地の憲法による制限」**という二重の構造になっています。

一言でいうと、**「現地の法律では禁止されているが、米国連邦政府(軍)の裁量権が極めて強い」**という状態です。


1. 現地憲法による制限

北マリアナ諸島の憲法(第14条第3節)には、核に関連する明確な禁止規定があります。

  • 貯蔵・廃棄の禁止: 核廃棄物の処理や、有害な放射性物質の貯蔵は、法律で特別に許可されない限り禁止されています。

  • 住民の拒否感: 過去にテニアン島(サイパンの隣島)が広島・長崎への原爆搭載機の拠点となった歴史や、近隣のマーシャル諸島での核実験の被害記憶があるため、住民の核に対する警戒心は非常に強いです。

2. 米国連邦政府の「国防権限」

しかし、サイパンは「米国自治連邦区」であり、国防と外交の権限は100%米国連邦政府が握っています。

  • 連邦法の優先: 米国の安全保障に関わる事態においては、現地の憲法よりも米国の連邦法や国防政策が優先されます。

  • 軍事利用の権利: 米国は、北マリアナ諸島の土地を軍事目的で使用する権利を保持しており、必要と判断されれば核兵器に関連する施設の展開を拒否することは法的に困難です。


3. グアムとの違い

同じマリアナ諸島でも、グアムとサイパンでは核の取り扱いや議論のトーンが少し異なります。

  • グアム: 核燃料を積んだ原子力空母が寄港できる専用の岸壁の建設が決まっており、戦略核の中継拠点としての役割が明確です。

  • サイパン(テニアン): 現在、テニアン島では「予備飛行場」の整備が進んでいますが、これはあくまで「グアムが攻撃された際の分散拠点(ダイバート)」としての役割が主です。現時点で、核兵器を常設貯蔵するような計画は公表されていません。


比較まとめ:核に関するスタンス

項目 サイパン(北マリアナ) グアム
現地法 憲法で放射性物質の貯蔵を制限。 米国連邦法が全面的に適用。
主な軍事役割 分散拠点・演習場。 核戦力の中継・司令部。
住民の動き 独自の反核運動や環境保護の訴えが強い。 防衛力強化を求める声と、核のリスクを懸念する声が混在。

歴史の皮肉

サイパンの隣のテニアン島には、今も原爆を積み込んだ「ハッチ(ピット)」の跡が保存されています。世界で唯一、実戦で核兵器を積み込んだ場所がこの領土内にあるということは、皮肉にもここが**「核戦略上の究極の拠点になり得る」**ことを歴史的に証明してしまっています。

関連記事

Is it true only 10% of Americans have passports?

http://www.bbc.com/news/world-us-canada-42586638

記事を読む

no image

「厚生」省の誕生と国内「観光」政策

字句「厚生」の誕生を調査することにより、国際に限定されて使用されていた字句「観光」の使用例が、国際観

記事を読む

『観光紀遊』岡千仭著 明治19年

明治19年であるから、観光は国際観光の意味が強い時代であろう。

記事を読む

no image

「観光」の持つ語感の例(メモ)

私がスマホで愛用しているNEWSPICKに面白い表現がありました。「こういう人がいると助かるわ。お陰

記事を読む

no image

観光で中国に追い抜かれる日 Space tourism not far off, rocket maker says

CHINADAILYの記事  2000万円払えばだれでも2028年に宇宙観光ができる予定  h

記事を読む

no image

『日本経済の歴史』第2巻第1章労働と人口 移動の自由と技能の形成 を読んで メモ

面白いと思ったところを箇条書きする p.33 「幕府が鎖国政策によって欧米列強の干渉を回避した

記事を読む

はやり言葉になるか『Maas』日経BP社を読んで

はやり言葉になるかどうかだが、UberやRide-Shareほどのインパクトはないのだろう。とにか

記事を読む

no image

グダニスク

1. 空港からのアクセス(時間節約がカギ) レフ・ヴァウェンサ空港から市内(旧市街)までは

記事を読む

no image

『近代京都研究』から見る「遊覧」と「観光」に関するメモ

『近代京都研究』(2008年思文閣出版)において、観光に関する記述とともに「観光」「遊覧」の用例とし

記事を読む

no image

Analysis and Future Considerations on Increasing Chinese Travelers and International Travel & Human Logistics Market ⑩

Ⅸ Future direction of human flows and sightseeing

記事を読む

no image
サイパンの核

サイパン(北マリアナ諸島自治連邦区)における核兵器の取り扱いは、**「

no image
AIに聞く 沖縄とハワイの違い

これら米国海外領土の歴史を知ると、現在のアメリカの国防戦略や、沖縄など

no image
AIに聞く 米国海外領土比較

ハワイ、グアム、サイパン、サモア、プエルトリコ、バージンアイランドがア

no image
AIに聞く ハワイ観光客数など

1. 日本市場の「独占的地位」の喪失 かつては年間150万人規模を誇

横田増生 アメリカ「対日感情」紀行―全米50州インタビュードライブ600日

2000年の取材ですから、今のアメリカは相当変わっているかもしれません

→もっと見る

PAGE TOP ↑