GOTOトラベル政策への総括をAIジェミニに聞く
公開日:
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人流 観光 ツーリズム ツーリスト
設問
コロナ時期に、日本政府はGotoトラベル政策を展開しました。私は人流観光ビジネス救済には一つの選択肢であったかとも思いますが、人の接触を増大させる施策であり矛盾を抱えているようにも思いました。時間もたちましたので、GOTOトラベル政策への評価について、学界、メディアなどは、どのように行っているのでしょうか。
ジェミニ
Gotoキャンペーンに対する評価は、その経済効果と感染拡大への影響という二つの側面から、学界、メディア、世論の間で多角的に論じられています。時間が経過し、データが蓄積されたことで、より詳細な分析や評価が行われています。
1. 経済効果に関する評価
- 肯定的な見方:
- キャンペーンによって、打撃を受けていた観光・飲食業界の需要が喚起され、経済を下支えする効果があったという見方があります。
- 観光庁のデータによれば、Gotoトラベル事業は少なくとも約8,781万人泊の利用があり、約5,399億円の支援額が使われたとされています。また、大手旅行会社も「大きな効果があった」と評価しています。
- 宿泊施設だけでなく、地域共通クーポンによって土産品店や飲食店など、周辺産業にも消費が波及したとされています。
- 経済学者の中には、再開された場合の経済効果を試算し、GDPを押し上げる効果があると分析するレポートもあります。
- 否定的な見方・課題:
- 日本総合研究所のレポートでは、Gotoキャンペーンによる消費押し上げ効果は限定的であったと分析されています。
- 割引率が一定であったため、単価の高い旅行ほど割引額が大きくなり、富裕層に有利な制度であったという批判があります。
- 手続きコストの関係から、中小企業よりも大企業やチェーン店が利用しやすかったという指摘もあります。
- キャンペーン終了後の反動減が懸念されました。
2. 感染拡大への影響に関する評価
- 肯定的な見方(感染拡大との直接的な因果関係は薄いとする見解):
- 国立感染症研究所の研究者らの報告では、Gotoトラベルキャンペーンが新型コロナウイルスの感染者数増加に直接関係があるとは断定できないとされています。
- Googleのビッグデータを分析した研究では、キャンペーンが始まる前から人々の行動は感染状況に応じて自粛と緩和を繰り返しており、キャンペーンがなくても感染は拡大した可能性があるという見方もあります。
- 否定的な見方(感染拡大を助長したとする見解):
- 一方で、キャンペーン開始後の1日の感染発生率が、キャンペーン開始前と比較して増加したという研究チームの分析があります。
- 世論調査では、「感染者が収まるまで全国でやめた方が良い」という意見が過半数に上るなど、キャンペーンと感染拡大を結びつけて懸念する声が多く見られました。
- キャンペーン開始時期が、感染者数が増加傾向にあった時期と重なっていたこと、特に東京都を除外したことなどが、タイミングの悪さとして批判されました。
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3. メディア・学界・世論の評価
- メディア:
- キャンペーン開始当初から、タイミングの悪さや、巨額の委託費(中抜き)問題、利権構造への疑念など、批判的な報道が目立ちました。
- 一方で、観光業界の窮状を伝え、キャンペーンの必要性も報じられるなど、多角的な視点から議論が展開されました。
- 学界:
- 感染拡大との因果関係を統計データを用いて分析する論文やレポートが複数発表されています。結果は研究者によって様々で、感染拡大の主要因ではないとするものから、一定の影響があったと示唆するものまで、見解は分かれています。
- 経済効果についても、マクロ経済全体への影響や、特定の産業への影響など、様々な視点から分析が行われています。
- 世論:
- キャンペーン開始当初は、「感染拡大を助長する」という懸念から批判的な意見が多数を占めました。
- 一方で、「キャンペーン自体は悪くないが時期尚早だった」という意見や、実際に利用した人の中には「良い取り組みだ」と評価する声もあり、複雑な感情が入り混じっていました。
総じて、Gotoキャンペーンは「経済再生」と「感染防止」という二律背反的な目標を掲げた政策であり、その評価は単純なものではありません。経済効果は一定程度認められつつも、感染拡大への影響は議論が分かれ、特に世論からはタイミングや公平性について厳しい目が向けられたと言えます。多くのデータが公表された今も、その評価は多岐にわたっており、結論は出ていない状況です。
- メディア:
具体的な論文として、越智良典氏の「GoToトラベルキャンペーンによる観光と経済の回復」があります。この論文は2021年3月に余暇ツーリズム学会で発表されました。
この論文は、GoToトラベルキャンペーンが観光と経済にもたらした影響を分析したものであり、キャンペーンが観光需要の回復にどのような役割を果たしたかについて考察しています。学術的な観点から、政策の効果を評価する研究の一例となります。
観光学関連の学会誌・研究レポート
- 大川荘への取材からわかったこと(会津大学短期大学部 2020年度卒業研究論文要旨集)
- この卒業論文は、GoToトラベルキャンペーンが宿泊観光業に与えた影響を、具体的な宿泊施設への取材を通して分析したものです。キャンペーンによる宿泊客の増加や、その後の影響について言及しています。
- Go To トラベル事業の経緯と論点(国立国会図書館調査及び立法考査局)
- これは厳密には学術論文ではありませんが、公的な機関が政策を詳細に分析したレポートです。キャンペーンの制度設計、度重なる変更、事業者の声、そして感染防止との整合性といった多岐にわたる論点を整理しており、学術研究の基礎資料としても活用されています。
- 観光学の専門家による見解(東海大学新聞)
- 東海大学観光学部観光学科の藤本祐司教授が、GoToトラベルキャンペーンの問題点について解説しています。これは論文の形式ではないものの、専門家がメディアに寄稿する形で、政策のタイミングや内容の詰めが甘かった点などを指摘しており、学術的な視点から政策を批判的に分析するものです。
経済学のことはあまり理解していませんが、高橋洋一氏が、Youtubeで、安倍総理から質問を受け、どの程度財政出動すればGDPを減少させないで済むかということへの回答をしたと話されています。そこでは、とにかく財政出動させることが主眼で、今日、結果として効果がおおきかったようにもいます。gotoキャンペーンでなくても、ほかに方法がなかったか、そのことがこれからの研究者のテーマではないかと思っています。
おっしゃる通り、高橋洋一氏が提言したような大規模な財政出動は、コロナ禍における経済対策として一つの有効な手段でした。GoToキャンペーンが唯一無二の選択肢ではなかったか、そして他にどのような政策があり得たかという点は、まさに今後の研究者にとって重要なテーマです。
財政出動の原則とGoToキャンペーンの特殊性
高橋氏の提言の背景にあるのは、経済が危機に瀕した際には、民間需要が落ち込む分を政府の支出で補い、総需要を維持するという経済学の基本原則です。これは、ケインズ経済学でいう「有効需要の創出」に当たります。
GoToキャンペーンもこの原則に沿ったものですが、その特殊性は以下の点にあります。
- 特定の産業への集中投資: 財政出動には、一律給付金のように広範な需要を喚起する方法と、GoToキャンペーンのように特定の産業(観光・飲食)に絞って支援する方法があります。GoToキャンペーンは後者の典型であり、需要喚起と同時に、最も打撃を受けた産業の救済を意図していました。
- 需要喚起と行動制限の矛盾: 人々の移動や接触を前提とする政策でありながら、感染拡大を防ぐための行動制限が求められるという、内在的な矛盾を抱えていました。
他にあり得た政策とその研究テーマ
GoToキャンペーン以外にも、経済を維持するための政策はあり得ました。これらを比較検討することは、今後の研究テーマとなります。
- 一律給付金:
- 方法: 全国民に現金を給付する。
- 特徴: 広範囲の消費を刺激し、経済全体を下支えする効果が期待できます。家計の貯蓄に回る可能性も指摘されますが、生活支援という側面も大きいです。
- 研究テーマ: GoToキャンペーンによる観光・飲食産業の経済効果と、一律給付金による広範な経済効果を比較し、どちらがより費用対効果が高かったかを検証する。
- 事業者への直接支援:
- 方法: 休業補償、家賃支援給付金など、事業者の固定費を直接的に補填する。
- 特徴: 事業者の倒産を防ぎ、雇用を維持する効果が期待できます。
- 研究テーマ: GoToキャンペーンによる需要喚起策と、直接的な事業者支援策のどちらが、雇用の維持や事業継続により効果的だったかを検証する。
- インフラ投資:
- 方法: 公共事業などを拡大し、雇用を創出する。
- 特徴: 景気対策として伝統的に用いられる方法で、長期的な経済成長にも繋がります。
- 研究テーマ: コロナ禍という特殊な状況下で、インフラ投資がどの程度の効果を発揮したかを、過去の事例と比較して分析する。
これらの政策を、経済学的なモデルや統計データを用いて比較分析することで、**「GoToキャンペーンは最善の選択だったのか、あるいは最悪ではなかったのか」**という問いに答えることができるでしょう。また、感染症という新たなリスクを考慮に入れた、今後の経済政策のあり方を探る上でも重要な研究となるといえます。
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