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イーフー・トゥアン

イーフー・トゥアンの中で最も読まれるべき著作。
『トポフィリア』よりも理論的枠組が明解であり、こちらのほうがお勧め。
<場所=愛着>と<空間=自由>の二分法によって人間と文化を考察する。
啓発的かつ感動的な叙述が散りばめられた人文学の名著といえる。
大学時代に最も感銘を受けた本。

地理学に一石を投じた本です。
 単純に言えば、著者であるトゥアン以前の地理学は計量的な地理学で大量の数字に直せるデータを集め、そこから地域性を見出そうとしてきました。
この方法での地理学は良く言えば極めて伝統的な地理学なのでしょう。しかし、重大な欠点(あくまでも個人的な感想)はこの手の研究は「面白く無い」
という点です。
 この面白く無いと言う点は、おそらく他分野の方がよく感じられていたのでしょう。その一例として本書の文庫版解説を担当された小松和彦さんが書かれている
「興味の赴くままに、専門の文化人類学、民俗学以外の書物を読んできたが振り返ってみると そのなかに人文地理学の本がほとんどない。はっきりいって、私の
興味を刺激するような本に出会わなかったわけである」
 この言葉で、それまでおかれていた(人文)地理学の立ち位置が見えると思います。
 しかし、トゥアンの考え方はまるで違います。「場所の経験」という数値化できないものを捉えて地域性を見出そうとし、地理学における「他の血」を入れる仕事を成し遂げている様に感じます。
 思想、哲学の面をカバーしつつも文化人類学や文学の分野までを参照しながら場所の意味について考え続けています。

 私が特に興味深くそして、面白く思ったのはやはり11章の「母国への愛着」だと思います。
 地理学的な側面からみたパトリオットティズム形成の話で、なぜ人は母国への意識を持つのかと言う内容が、国ではなく「人間」を主体として議論がされています。そこに存在する場所と人間の交換不可能な関係性についての議論が十分にされています。
 地元意識や、地元愛などの研究にも非常に役立つ、というより基盤となる研究だと思います。
 人が集まる場や人が愛する場、そしてその場を愛する人たちがどの様な思いを持っているのか、ミクロな視点とマクロな視点がはっきりしていて非常に読みやすく参考になる書籍だと思います。

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