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公開日: : 最終更新日:2021/09/17 va旅行中東イスラム, 海外観光

◎ブラックホーク・ダウン

本作は、ソマリア内戦への超大国による介入とその失敗を描いたノンフィクション小説『ブラックホーク・ダウン アメリカ最強特殊部隊の戦闘記録』(マーク・ボウデン著、日本版は伏見威蕃訳・早川書房刊)を映画化したものである。

「リアル北斗の拳」と呼ばれるソマリアの今-自撮り棒とIED(即席爆発装置)

下村靖樹フリージャーナリスト2018/2/24(土) 6:41

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首都モガディシュ最大のビーチ「リドビーチ」で自撮りする青年(撮影/著者)

インターネットスラングで「リアル北斗の拳」と呼ばれることもある、東アフリカの国ソマリア。

砲撃と銃撃で崩れ去った建物の残骸が横たわる、荒廃した町。

飢えで苦しむ人々に襲いかかる、銃やRPG(対戦車砲)で武装した暴漢たち。

BGMは、逃げ惑う人々の悲鳴と銃声。

――2002年、初めてソマリアの首都モガディシュに足を踏み入れた時に目にした光景は、確かに、限りなく「リアル北斗の拳」の名に違わない世界でした。

2002年当時モガディシュ北部を支配していたムセ=スジ氏の私兵(撮影/著者)
2002年当時モガディシュ北部を支配していたムセ=スジ氏の私兵(撮影/著者)
ムセ=スジ氏(中央)(撮影/著者)
ムセ=スジ氏(中央)(撮影/著者)

実際に取材中、私もスナイパーに狙撃されましたし(幸いかなり遠距離だったので外れましたが)、サッカーチームへの取材を試みた際は、チームのコーチと私の通訳が口論になった結果、あやうく銃撃戦になるところでした。

2018年のソマリア

リドビーチ(撮影/著者)
リドビーチ(撮影/著者)

時は流れ2018年。

自撮り棒で撮った写真は、もちろんSNSにアップロード(撮影/著者)
自撮り棒で撮った写真は、もちろんSNSにアップロード(撮影/著者)

モガディシュ最大のビーチであるリドビーチには、家族連れや初々しいカップルなど多くの人々が詰めかけ、ビーチで記念撮影をしたり、サッカーをしたり、思い思いに過ごしています。

中でも、青く透き通ったインド洋とソマリアの国旗を背景に、自撮りする若者たちの姿が印象的でした。

IEDによる攻撃を受けたウガンダ軍(AMISON)のMRAP(耐地雷伏撃防護車両)(写真提供:ウガンダ軍)
IEDによる攻撃を受けたウガンダ軍(AMISON)のMRAP(耐地雷伏撃防護車両)(写真提供:ウガンダ軍)

他方、初めて味わった恐怖は、IED(即席爆発装置)。

ソマリア史上最悪の爆弾テロ(2017年10月14日発生・死者500名以上)の記憶が生々しく残る状態で、IEDの攻撃を受けるリスクが高い場所を移動する時は、結構な緊張を強いられました。

そもそもなぜソマリアが内戦に陥り、未だテロが発生しているかについては、ソマリア特有の氏族問題と宗教、さらには近隣諸国を始めアラブリーグや欧米・中国など、非常に複雑な要素が絡んでいるため追って紹介するとして、簡単にその歴史を説明すると以下のような流れになっています。

  • 1960年 イタリアの信託統治領、イギリス領から独立。「ソマリア共和国」誕生
  • 1969年 バーレ少将によるクーデター発生。バーレ氏が大統領となり国名を「ソマリア民主共和国」に改称
  • 1990年 バーレ大統領が追放され、本格的な内戦に突入
  • 1992年 国連PKO多国籍軍派遣
  • 1993年 モガディシュの戦闘(映画「ブラックホークダウン」で描かれた戦闘)
  • 1995年 国連PKO撤退
  • 2000年 暫定国民政府(TNG)が成立
  • 2004年 ソマリア暫定連邦政府(TFG)設立
  • 2006年 イスラム法廷会議が首都モガディシュを占拠・アルシャバブの活動が活発化
  • 2007年 AMISOM(アフリカ連合ソマリア・ミッション)派遣開始
  • 2012年 21年ぶりに統一政府が樹立。現在の「ソマリア連邦共和国」誕生

変わりゆくモガディシュ

モガディシュの町並み(撮影/著者)
モガディシュの町並み(撮影/著者)

前回の訪問は2014年。3年ぶりの訪問でまず初めに驚いたのは、着陸直前に機内から見えた町並みでした。

真新しいビルがそこかしこに建ち並び、さらには上空からもそれと分かる、きれいに整備されたスポーツ施設もあり、すっかり様変わりしています。

そして2015年に新しく運用が開始された新空港には、なんとDuty FreeとVIPルームが!

モガディシュのアデン・アッデ国際空港内のDUTY FREE(免税店)(撮影/著者)
モガディシュのアデン・アッデ国際空港内のDUTY FREE(免税店)(撮影/著者)
アデン・アッデ国際空港内のVIPルーム(撮影/著者)
アデン・アッデ国際空港内のVIPルーム(撮影/著者)

旧空港は、薄暗いロビーに足を踏み入れた瞬間から、サバイバルレースでした。

どこの誰ともしれない私服姿の自称空港職員で溢れかえり、頼んでもいないのに手荷物を奪い取っては「俺は空港職員だ、荷物は任せろ!」「いや、そいつは偽者だ。俺が本当の空港職員だ」と私そっちのけでケンカが始まります。

全員私服なのでだれが本物か分からない私としては、「自分でやるから大丈夫だ!」と怒鳴り返しつつ懸命に荷物を守ろうと奮闘するのですが、毎回敗北……。

気づけば荷物を見失わないよう、人波を強引にかき分けて進む私服の背中を追いかけるのが精一杯でした。

そしてオチはいつも同じ。

「オッケー、これで大丈夫だ!」と笑顔で手を差し出す私服との、タフなチップ代の交渉です。

支払いは米ドルか隣国ケニアのケニアシリングのみ。

笑顔で「20米ドル」と手を出す私服に「いやいや、それは高過ぎでしょ。そもそも頼んでもいないし。払えても1米ドルだよ」と私が返すと、戦いのゴングが鳴ります。しかしこの戦いにも勝利したことはなく、大体5米ドルから7米ドルは払ってしまいました。

旧空港には、入国管理所をはじめエアコンなどに日本からの支援である事を示す日の丸のステッカーが貼られていた(撮影/著者)
旧空港には、入国管理所をはじめエアコンなどに日本からの支援である事を示す日の丸のステッカーが貼られていた(撮影/著者)

―― 一方、今回初めて利用した新空港に足を踏み入れると、空港内にいるのは制服を着て身分証を首から下げた正真正銘の空港職員だけ。私服の姿は完全に消えていました。

そしてみなさん、実にスマートに業務をこなし、賄賂の要求もなければ、無理矢理私から荷物を奪うこともありません。

「ソマリアにも、ついに普通の国際空港が出来たんだ」と感動する一方、私服との戦いに備え、出発前にわざわざ両替したポケットの中にある10枚の1米ドル札の存在を思い出し、一抹の寂しさも感じました。

下村靖樹フリージャーナリスト

1992年に初めてアフリカを訪問し、「目を覆いたくなる残酷さ」と「無尽蔵な包容力」が同居する不思議な世界の虜となる。現在は、長期テーマとして「ルワンダ(1995~)」・「子ども兵士問題(2000年~)」・「ソマリア(2002年~)」を継続取材中。主に記事執筆や講演などを通し、内戦や飢饉などのネガティブな話題だけではなくアフリカが持つ数多くの魅力や可能性を伝え、一人でも多くの人にアフリカへの親しみと関心を持ってもらう事を目標に活動している。 

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